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2004年11月29日

ピカソ展 −躰[からだ]とエロス−

ピカソ展東京現代美術館は僕が行った数少ない美術館の中でもTOP5に入るキレイな美術館。そんな場所でデカデカと開催されていたピカソ展へ。イメージの所作にそもそも答えなんぞないわけで、あんまり深いことを考えずにぼんやりと眺めた。

彼の絵のヘンテコさってのは認識のバグから来ているんだろうか? いやそうじゃない。まとまりのよさがどうにも気にかかる。「アトミー『三人の女』」なんてキャラクターデザイン的な今っぽさがありあり。縦が横、横が縦のシュールレアリスム。意外に平凡な鼻と体の造形(平凡というのは悪い意味ではなく、今に通じてしまうカッコ良さがあるという意味)。どれもこれも今なんだよな。何でだろ?

やっぱピカソは絵との戯れ方がいいんだな。「海辺の人物たち」とか「赤い肘掛け椅子の女」なんか接地点の感触のみで描いている感じがする。気持ちいいのはチンチン、乳首、舌、みたいな。女性に対する愛欲も結構スマートで、オナ禁中の中学生みたいな熱っぽさを感じる。どこでそれを感じるかというと、漫画風の連作「ラファエロとラ・フォルナリーナ」あたり。二人の男女が愛し合っているところに、教皇が現れるのだが、そのタイトルと描かれたシーンが面白い。二人が愛し合っているのを眺める教皇だったり、便器に座る教皇だったり。あれはまともじゃないと描けない。まともに嫉妬してないと。ジャン・コクトーのにも笑ったけど、こっちのが面白い。

Posted by Syun Osawa at 22:07

2004年11月28日

イワン・デニソビッチの一日

『ソルジェニツィン小説集』
アレクサンドル・ソルジェニツィン/訳:小笠原豊樹/河出書房新社

ソルジェニツィン小説集辛気臭い。あー辛気臭い。ソルジェニツィンを読もうと思ったのは、ノーベル文学賞を受賞してるからではなく、『ロシア文学案内』に出てくる彼の写真があまりにも素敵だったからに他ならない。あの写真はサブカルだと直感した。その点については後で述べる。まずは雑感なんぞツラツラと。

「イワン・デニソビッチの一日」

ソ連の強制収容所(ラーゲリ)の実態を書き出した作品。訳のわからん理由でスパイ容疑を掛けられ、放り込まれた強制所での生活を淡々と書いている。当時のソ連の末端って本当に悲惨だったんだなぁ。とにかくみんな荒(すさ)んでる。それは共産主義とかそーいう思想的なものとは違って、やっぱ「寒い」んだろうな。あと食い物がない。ぶっちゃけそれにつきるような気がする。みんなが三木谷社長みたいな生活だったら、コルホーズだろーがソフホーズだーろがいいわけでさ。

物語自体は一日の出来事を時系列に沿って追っているだけなのだけれど、これが実に辛気臭い。辛気臭いんだけど人間の描き出しが凄いんだな。生真面目な主人公、シューホフが辛い状況の中で、自分の生活をどのように位置づけ生きていくか。その苦悩がクる。善悪とかじゃない。周りがどうこうとかじゃなくて、自分は仕事をサボらない。誰であれ助けてやる。それを自分で自分に位置づけるラストに泣けた。

「クレチェトフカ駅の出来事」

これはよくわからない。列車の発着を管理する駅員が、スパイと思わしき老紳士を密告するというだけの話。「密告」する青年に焦点が当てられるが、怪しい人物を警察に「怪しい人がいます」って言うのは別に日本じゃたいした話じゃない。映画館でもそんなアナウンスしてるし。問題なのは、密告された人間が問答無用に逮捕され、その後行方知れずになるというソ連という国の恐ろしさの方だろう。崩壊してよかったねぇ。

「マトリョーナの家」

宮崎駿で言ったら『もののけ姫』系かな。「イワン・デニソビッチの一日」よりも説教臭い。鼠とゴキブリが大量にいる田舎の家に住む、糞マジメなおばあちゃんの家に居候する先生の話。鼠とゴキブリはちょっと…。僕の安アパートにもたくさんいるので笑えない。

「ソルジェニツィンはサブカル化するか?」へつづく

Posted by Syun Osawa at 01:57

2004年11月27日

ルンパロさんが…

shockwave.com AWARD 2004 発表!

オフレコだと思っていたら、いつの間にか発表されておりました。ルンパロさんグランプリです。当然ですね。これでオシャレでiPodな男女がこぞってインディーズアニメの世界に入ってくることでしょう。多摩美とは違った色合いの連中です。第二のスーパーミルクちゃん誕生も近いかも。

Posted by Syun Osawa at 00:21

2004年11月22日

古本屋あぼうん

中野の古本屋が閉店セールをやっていた。張り紙を見ると全品50%OFFの文字が。古本の時点で安いのに、古本屋があぼうんするとこんな消費者にとっていいことがあるのかと守銭奴のように店内を這い回る。でも背取りなど出来るはずもなく、普通に欲しい本を買って帰った。以下戦利品。

『別冊一億人の昭和史 昭和漫画史』毎日新聞社
『別冊奇想天外 SFアニメ大全集』奇想天外社
『超常科学謎学辞典』小学館
『赤目』白土三平/小学館
『ゲゲゲの森の鬼太郎』水木しげる/角川文庫

別に愛着のある店ではなかったけれど、古本屋があぼうんするというのはそれなりにさみしい。ただ閉店セールで売値の半額になっているのに、それでも多くの本がブックオフより高いという現実を目の前にしては淘汰やむなしかも。神保町の古書街みたいに専門性をアピールできればあぼうん(気になるな…)せずに済んだのかもという説は言うは安し。現実的には難しいのだろう。

古本屋があぼうん(気になるな…)しないためにも、古本屋があぼうん…

あぼうん、あぼうん、うるさいな! みんな「あぼーん」の「ー」のところは読んだあらへんねん!

以上、笑い飯のネタでした。笑い飯は今年、M-1で優勝することができるのだろうか。紳助という強い味方がいないだけに、今年は東京勢が優勝することも十分考えられる。

Posted by Syun Osawa at 00:05

2004年11月21日

DJブースじゃないのね…

意外性のハイエース・サウンドサテライト

こんなカッコイイのも展示してたんだ。輸入車ショウって10年くらい行ってないけど、これは見たかった。特に実演。残念なのは車本体があんましカッコよくないことか。そういうや昔、トレーラー荷台がステージに改造されていて、そこがガーッと開くとスーツ姿の舘ひろしが立っていて歌うという謎のドラマがあったな。あの時代はナイトライダーとか流行してたけど、そういうのが再燃する兆しなんだろうか。

Posted by Syun Osawa at 14:42

2004年11月20日

ウラBUBUKA 2004年11月号

2004年11月号/コアマガジン

ウラBUBUKA 2004年11月号エロ本系本屋に立ち寄ったところ「マンガ家のウラ」と書かれた見出しに釣られ購入したのが半月ほど前。あれ? 『ウラBUBUKA』ってこんな雑誌だっけ? ムックと思いきや裏表紙を見ると雑誌コード。角川の逆か。でもいつのまに『Quick Japan』化したんだろう…。

書かれている内容は、それなりのものもあり、ネット寄せ集めもありって感じ。むかし読んだ大泉実成『消えたマンガ家』ほどのインパクトはなかったけれど、出版社への持ち込みなんかのちっちゃい実話はそれなりに面白かった。ただ、マンガ家師弟関係相関図の劇画村塾から板垣恵介が抜けるなど気の抜けた部分も多く、浦沢直樹のブレーン、長崎尚志への言及も曖昧だ。講談社の樹林と小学館の長崎って言ったら有名な話だし、オフィシャルなところでも数年前のロフトプラスワンのイベント(藤田和日郎、村枝賢一、河合克敏のトークショウ)で小学館の編集が内実を明らかにしている。

こういうネタ本はつい食いついてしまうのだけれど、読んでみると悲しい部分もある。「ネタをネタとして…」ってことなんだろうけど、僕としてはやっぱり『オレのまんが道』(全二巻)が心のバイブルであり、『燃えろペン』があるべき姿だと思う(『吼えろペン』も一応全巻揃えてますが、こっちはそれなり)。あとは『編集王』の回想シーンか。

ちなみにこの号で一番面白かったのはマンガ家裏話ではなく、タコシェの店長が語る「漫画でわかる刑事の世界」だった。刑事と名の付く漫画は、俯瞰してみると確かに笑える。たとえば『マイコン刑事』についてこう書かれている。

〈人質を取った犯人を目の前に「(作戦成功)確立は50%、五分五分か…」と悠長にポケコンで逮捕成功率を弾き出す矢崎は、この後、上司から激怒されるのだが…当然である。〉

この記事を読んで、先日、古本屋で中国系の留学生二人(女性)が片言の日本語で「この店に『ドーベルマン刑事』はありますか?」と尋ねていて、ギョッとしたことを思い出した。あとは何も思い出さない。

Posted by Syun Osawa at 00:08

2004年11月17日

昭和史七つの謎 Part2

保阪正康/講談社

昭和史七つの謎 Part2梅田の紀伊國屋で1万冊以上売ったという謎本(というくくりでいいのかどうかは知りませんが…)『昭和史七つの謎』の第二弾。ゾルゲ事件に大本営発表、陸軍中野学校に天皇の戦争責任問題、そんでもって田中角栄。今回も的を絞った初心者向けのミステリーがテンコ盛りです。

たとえば、A級戦犯について「アメリカの一方的な裁判だ!」的な捉えられ方が若者の中で浸透しているけれど(実際それで7人が死刑執行をされるし)、それ以外のA級戦犯は意外と楽勝でシャバに出て、何事もなかったように過ごしている感じを「謎の一つ」として提示している。イラク戦争で捕まったフセイン以下の幹部達はじゃあどうなるんだろう? 楽勝でシャバに出てくるのかなぁ? とか考えながら、出てこれないでしょう普通、との思いに至る。

なかでも「戦争責任」とは何か? の考察は興味深かった。たしかにわかったようなわからない言葉だし。本書ではそれを考える指標として、以下のような表を提示していた。

(縦軸)

  1. 開戦責任

  2. 戦争を終結させなかった責任(終戦責任)

  3. 敗戦責任

  4. 国民に事実を知らせなかった責任

  5. 国民に過酷な運命を強いた責任

  6. 国民の財産を守らなかった責任

  7. 国際法を無視した責任

  8. 戦争の結果について報告を怠った責任

  9. その結果に基づいて具体的行動が伴っていない責任

  10. 戦争被害に対する責任

(横軸)

  1. 政治的責任

  2. 法律的責任

  3. 道義的(人間的、倫理的)責任

  4. 歴史的責任

  5. 経済的責任

  6. 社会的責任

この表を使って、天皇の戦争責任とはどういう事を指すのかを検証していたのだけれど、僕の興味は現在進行中のイラク戦争について、ブッシュは、そして小泉はどれほどの戦争責任があるのかという事。うーん。やってみると意外に難しい。

Posted by Syun Osawa at 23:42

2004年11月16日

firefox vs Sleipnir

本来ならば firefox vs InternetExplorer と書くべきですかね。firefox はかなりいいです。Sleipnir 的なことができます。WWWC との親和性は不明なので完全乗換えとは行きませんが、PCの負担が少なめなのが非力なノートーユーザーにはよろしいですね。

とはいえ、MovableType のフォームにこの文章を打ち込むときの反応はちょっと鈍い。日本語がズレる。表示が微妙なときがある。などの問題もちらほら。密かな期待は、EdMaxフリー版からの乗換えを検討しているフリーメーラーの Thunderbird の正式版リリースだったりします。

Posted by Syun Osawa at 22:18

2004年11月15日

instParaPara

(1:20s/it/526kb) download
by Arikama

二代目(仮)』のオープニングムービーにも使用させていただいている曲です。ありかま氏はかつてこの作品に対して以下のようなコメントをしていました。(僕の記憶が正しければ…)

「…パラパラ。」

パラパラです。いや違います! アニソンです!! サビがね…いいんです。というか,こういう MOD を作る日本人ってのは僕はあまり知らなくて,この手の作品は JAPANIME MOD さんだけの専売特許だと思ってましたから,それをありかま氏の技術を持ってして,しかもオリジナルで,しかもオタク心をくすぐるめっちゃキュートなサビまでついて…大変です。

もちろんヘッドフォンで大音量で聴いてください。そして 3 回はループです。そしたら,意外に展開と音のつなぎ合わせ方が練られていることに気づきます。MOD の場合は音の管理は全部自分なので(だからこそシビアにその人の実力が測られるわけですが),単純にこの人は凄いなぁと思うわけです。僕はもう音楽を作る才能に見切りを付けてしまいましたが,今から MOD を作ろうという方はありかま氏の作品は絶対参考になります!…と思います!!

古谷実はかつて学校推薦図書『稲中』の中で「人生において一番大事なのはノリノリになることである」と申しておりました。どこで自分を開放するか。結局どこでもいいと思うんです。5.1chサラウンドのヘッドフォンの中でも、トイレの中でも、ジュリアナでも、ヨン様でも。開放したもん勝ちという噂もあります。

Posted by Syun Osawa at 21:12

2004年11月14日

世界は密室でできている。

舞城王太郎/講談社

世界は密室でできている。子供向けに書かれた笑い話の本。何だっけか? とにかく小学生の頃に読んだ講談調の児童書をどうしてか思い出した。もちろん「改行ぜんぶ取るなよ…それ気持ちいいの、書いてる人だけだよ」と思ったし、独特の言い回しに読みづらさがなかったわけじゃないけれど、皮肉るほど嫌味もないし。読後感も清々しい。

しかしこの本、一体全体どんなノリなんだろう? 本をたくさん読んだ人が箸休めに読むノリの本なのか、前衛を楽しみたい人が読むノリの本なのか、それとも中高生が同時代の上昇気流を共有したくて読むノリの本なのか。僕の場合それほど本をたくさん読むほうではないし、感想文を書き始めたのも仕事がらってわけで訓練の色合いが強い。だから、何かと対比してこの人をどうこうできないんだなぁ。ところどころに出てくるゴシックの表記なんか筒井康隆がとうの昔にやってるとか。知らんし。だからまぁ、ある意味、中高生と同じようなシンプルな感覚で僕の場合は読んでいるのだと思う。ちょっと違うのは、僕が大人になったってのもあるんだろうけど、中学生の下心がそんなんでおさまるかよ。という下世話なところくらいかな。

最後のところは、全部おいても気持ちよかった。芸術うんぬんというよりも、この本を読んでよかった。と少なくとも思わせた。そして田舎の今の情景がいい。米原の閑散としたホームは知ってる人にはよくわかる。

Posted by Syun Osawa at 12:50

2004年11月12日

cheapTechno

(01:25s/it/698kb) download
by Arikama

1分25秒。その短い時間の中でキッチリと起承転結がつけられ,テクノ・ミュージックとしての素養を多分に含みながら完成に至っているのが特徴です。後半に開放していくベタで躍動感のある展開に、Arikamaさんの音楽に対する距離感が見えてきます。

また、この作品は音のバランスが PC の性能に左右されるという現実を垣間見せています。各音の倍音が削られればタイトルどおりチープな音にしか聞こえません。しかしこの作品には前作同様、彼のシンセの音選定への強いこだわりが伝ってきます。

Posted by Syun Osawa at 23:23

2004年11月10日

『おたく』の精神史 一九八〇年代論

『おたく』の精神史大塚英志著『「おたく」の精神史 一九八〇年代論』を読了。僕は80年代の人ではないので、ほとんどの話がふーんってのは仕方がない。ちなみに大塚はこの本を「正史ではない」と言っている。でも、中森明夫は『 サブカル「真」論2 』というイベントで「正史という噂もありますけどね」と言っていたから、それなりの空気はあったんだろうなぁ。ただし「徳間・角川編」として。僕はそれを社会の教科書でも読むように読んだ。

歴史的な背景とかは横に置く。わからないから。大塚は本書の中でよくロリコンという言葉を口にするけれど、僕はその嫌悪感をどうしてもぬぐえないんだなぁ。知的なロリコン変態野郎という風に映ってしまう。でも不思議なことに、彼が編集長を務めたロリコン雑誌『漫画ブリッコ』は半分以上が女性だったという記述がある。編集部にも女子高生が溢れていたと。そうなのかもしれない。彼の「ロリコン」のイメージは僕とは違うのかもしれない。

ここで考え方を修正。彼はビルドゥングス・ロマンの不成立の枠組みで梶原を語ったが、その視線は普通の男性(異論があるだろうけれど)の中にはないと思う。彼の宮崎勤に対する眼差し、UWFへの言及の仕方、手塚治虫への愛、梶原一騎の捉え方。どれにも「男」っぽさを感じない。「男」っぽさって何? って言われたら上手に答えられないけれど、フェミニストに受け入れられる彼の言動や、徹底的に生活に根ざした現実主義な考え方など、僕は彼を「おばちゃん」だと思うことにした。ヒステリックで結構根に持つ太ったおばちゃん。そうすれば、僕が大塚英志に動員されない理由が理解できる。

根拠のない大きな物語へ無批判に動員される「ワクワク」感とか、論理的に破綻していることを深い考え無しにやってしまう感覚とか、僕にはある。石原都知事の考え方に賛同していないくせに、愛着が湧いたりカッコイイなぁと思ったりもする。それは「おたく」か「おたくでないか」というのとは関係ない気がする。

Posted by Syun Osawa at 20:59

拡張geocities

geocities が拡張がどーのこうのっていうんで、喜んでいたら、なんかすんごく重くなってる。もう。とりあえず トップページ だけ更新。

Posted by Syun Osawa at 00:51

2004年11月08日

SonicFoundry

(01:00s/it/473kb) download
by Arikama

作品公開の順序は異なりますが、今後紹介する『 cheapTechno 』、そこからさらに後に紹介する『 Unreal 』へと続く流れで聴いていただけると面白いのではないかと思います。そうした大きな流れが、ありかま氏の作品体系を知る一つの手がかりとなると僕は何となく考えています。

4つ打ちのシンプルなキックにシンセ・ベースが乗っかってきて、多層にシンセを絡ませるイントロのあり方が作品の立ち位置をわかりやすく示しています。海外のいわゆるデモシーンの音楽とか(それがまぁ本流としてのMODなんですけれど…)が好きな人は、「ああ、こういうのあったなぁ」と思っていただけるでしょうか。僕のサイトはもうMODのサイトの面影はなくなってしまいましたが、そういうのを懐かしんでくれる人が一人でもいたら嬉しいですね。

遠巻きに見ると、やはり僕の頭の中には『 Unreal 』があるので、どうしても大きな一つの流れとしてこの曲を捉えてしまいがちです。消化不良といえば身も蓋もない言い方ですけれど、スペーシーなシンセ・ワークはありかま氏の打ち込みへのこだわりを感じずにいられません。また、後半のメロディパートも懐かしさのある古き良きドリーム系列(かつてそんなダサいジャンルがあったわけで…)を思い起こさせます。しかし、やはり中心は前半から昇華するまでの技巧的な展開の方でしょうか。

Posted by Syun Osawa at 23:24

test test test!!

(00:51s/it/263kb) download
by Arikama

最初に断っておきますが,基本的にありかま氏の曲は再生時間が短いです。本作品も51秒なので,とりあえず再生したらすぐにリピートを2回押しましょう。

とにもかくにも、この曲が最初でした。フリーの音楽作成ツールModPlugTrackerに興味を持たれ、当時あったBBSに「とりあえず作ってみました。」という書きとともに公開されたのがこの曲。タイトルに「diet」と書かれているのは8bitバージョンということ。一応,全作品16bitバージョンも持っていますが,サイズが一気に大きくなるので,とりあえず8bitでツラツラッと紹介していきたいと思います。(音質的にはそれほど落ちてない印象ですので。)

初作品にしていきなり予断を許しません。

よくもまぁ,これだけの音とフレーズをこの短い時間の中に盛り込めるものだなぁと思います。集約されている感じにまず驚かされたのです。

MODで音楽を作ってみようと考える方なら,ありかま氏の作品はぜひともModPlugTrackerで開かれたらいいと思います。MODはある意味で究極のオープンソースです。音のミックスからテンポ,エフェクト,トラッキングの仕方,音帯調整にいたるまで全てが丸裸になります。

Posted by Syun Osawa at 00:41

いろいろ…

lolipopと拡張geocitiesで500MBの容量が確保できる見通しがついたため、サイトのメンテナンスなんていうものを続けております。もう少しまともなサイトを目指しつつ、作業が遅れていたありかま氏とshizo氏の作品を随時公開していきます。

Posted by Syun Osawa at 00:36

2004年11月06日

ロバート・ホワイティングかく語りき

大好きなライター(と彼は自分を表現する)、ロバート・ホワイティングのトークイベントに参加した。ササキバラ・ゴウ×大塚英志 以来のジュンク堂池袋店。ホワイティングは『東京アンダーワールド』や『和をもって日本となす』でも知られるように、日本人より日本に詳しい。下手糞ながら日本語も話す。今回は『イチロー革命』のイベントだったので、トークの内容は野球中心だったが、マニアックな日本の選手や関係者の名前がポンポン飛び出しすこぶる驚かされた。

ホワイティングは1977年、『菊とバット』でデビューする。同書はアメリカでも日本でも売れたが、出版に至るまでの経緯はそれほど順調ではなかったようだ。彼は日本の上智大学を卒業した後、出版社勤務を経てフリーになる。しかしアメリカの出版社に原稿の持ち込みを続けるも13社に断られた。14社目の会社の社長には「僕の出版する本は6割が黒字になる、君の本を出版してやるがこの本は4割の方だ。」と言われたそうだ。僕が彼の好きなところは、このエピソードの後に笑って「勘違いするなよ、ということね。」と言えるところだ。

彼は面白いエピソードも持っている。上智大学に留学しているとき、渡辺恒雄(読売新聞オーナー)の英語の家庭教師をしていたそうだ。ホワイティングは読売新聞記者だった当時の渡辺について、「頭がよく、勉強家だった。家にはドイツやフランスの哲学書が並んでいた。彼は相撲が好きで、野球は嫌いだった。」と言っていた。土田世紀著『編集王』の編集長のエピソードが頭をよぎる。かつてバイタリティにあふれていた若者が、社会の荒波にもまれていくうちに社内政治を覚え、嫌な大人になっていくあのエピソード。

観客の質問にこたえて取材方法についても語っていた。インタビューをするとき、取材対象者の著書をすべて読むことはもちろん、その人に関する著書も可能なかぎり読む。さらに、以前その人を取材したことのある記者、友人、家族を取材し、最後に本人にインタビューをするそうだ。『イチロー革命』も100冊の本と、100人へのインタビューと10万マイルの取材距離によって作られている。

以前、ある新聞記者が僕にこんなことを言った。

「僕はインタビューをするとき、その人の著書をすべて読む。ある作家にインタビューしたとき、『他の記者は1、2冊しか読まずに取材にくるけど、全部読んできたのはあなたが初めてよ』と言われた。」

僕はホワイティングの取材方法を知っていたので、そんな事を僕に自慢するなんて優秀なんだろうけど底の浅い人だなぁ、と思った記憶がある。

ホワイティングは『東京アンダーワールド』の続編『東京アウトサイダーズ』のあとがきか何かで、911のテロについて語っている(正確にはホワイティングが翻訳者の松井みどりに電話で語った内容を書いていたのだと思うが…)。シンプルな言葉の中に人間に対する愛が溢れていた。ニュートラルでアウトロー。うがった見方もないし、不必要な自慢もしない。62歳、鎌倉在住。こういう大人になりたいとつくづく思う。

Posted by Syun Osawa at 00:23

2004年11月05日

兄弟の肖像

野間文芸賞に辻井喬氏「父の肖像」

異母兄の堤義明氏が逮捕されるかもしれないというこの時期に、いやはや何とも皮肉なものです。

Posted by Syun Osawa at 00:52

2004年11月03日

神田古本まつり

下北沢の古本屋で見つけた『聖マッスル』が、数日後に売れていた。あの時買っておけば…。神田古本まつりは収穫なし。キャパ写真展の図録などを探してみるも、ド素人のため上手く見つけられなかった。帰宅後、以前まとめ買いした『新カラテ地獄変』の抜けている巻をネットで揃えた。やっぱりネットって便利。次は『空手バカ一代』を揃えるか、『アストロ球団』を揃えるか、貧乏人の悩みは続く。

Posted by Syun Osawa at 21:15

桃太郎・海の神兵

桃太郎・海の神兵『桃太郎・海の神兵』(監督・脚本、瀬尾光世)を観賞。1945年に公開されたこのアニメーション映画は、1942年にインドネシアで行われた海軍の落下傘部隊攻撃をネタ元にしているらしい。桃太郎の鬼退治をストーリーの下敷きにしながら、可愛いキャラクター達が戦場へと向かうというプロパガンダ映画だ。少し前に、北朝鮮のプロパガンダアニメをフジテレビなどが連日放送していたが、やってることはほとんど変わらない。そして変わらないだけに複雑な気分になる。

しかし冷静な眼で見ると実はそれほどたいした内容ではない。この程度の暴力アニメは世の中に溢れている。違うことといえば、この作品の製作を依頼したのが国であり、戦意を高揚するという明確な意図があって作られたことくらい。でもこの「違うこと」があるために、ガンダムやエヴァンゲリオンを見るような調子で見ることを許さない。作る側にとっても、見る側にとっても悲しい作品だと思う。

そういう部分を切り離して見たとき、日本らしさが光っていると感じた部分もいくつかあった。一つは主人公が桃太郎(物語の中で唯一の人間)ではなく猿の一兵卒だったこと。家族を思い、一人前の男になりたいと生きる主人公のひたむきな姿は、現在の漫画キャラクターにも引き継がれているのではないか。もう一つは、ハイライトのひとつである落下傘降下のシーン。白いクラゲのような落下傘が大量に空に浮かぶ様子が叙情的に描かれており、『オネアミスの翼』のラストシーンを連想させた。

(関連)戦争と芸術

Posted by Syun Osawa at 20:00

2004年11月02日

くもとちゅうりっぷ

くもとちゅうりっぷ『くもとちゅうりっぷ』(演出、政岡憲三)を観賞。ちなみに左の画像は、本作品が公開された1943年当時の新聞広告らしい(『日本漫画映画の全貌』より引用)。凄い。とにかく凄い。

この作品が生まれた経緯は『日本漫画映画の全貌』に詳しいが、何でもこのアニメーションは政岡氏の設計によるマルチプレーン・カメラによって撮影されたらしい。しかも、フィルムは松竹の録画用のフィルムの余りを使用したそうだ。アニメを作るために撮影機材まで設計するなんて、カッコ良すぎるエピソードだ。もちろんアニメーションも尋常じゃない。とてつもなく繊細に動く。ミュージカル仕立ての難しい作品にもかかわらず、音ともしっかり同期がとれている。こんな凄い作品がたいした絵コンテもなく作られたことに驚きを隠せない。はぁ。

タイトルの『くもとちゅうりっぷ』は平仮名だとわかり難いが、蜘蛛とチューリップの意味(内容的には蜘蛛とてんとう虫の話だけど)。戦時中という時代背景にもかかわらず、能天気にこういう作品を作れるってのは本当に素晴らしい感性だと思う。

(関連)戦争と芸術

Posted by Syun Osawa at 00:53