2007年10月31日
放浪の天才数学者 エルデシュ
ポール・ホフマン/訳=平石律子/2000年/草思社/四六
フェルマーの最終定理を証明したアンドリュー・ワイズは7年間、たった一人でひっそり研究を続けていた。なぜなら他の数学者に証明を先んじられることを恐れたからだ。
一方、エルデシュは世界中を旅し、多くの数学者と交流を持った。そして、問題を共有し数多くの共著論文を記した。ひとくちに数学者といってもその横顔は様々である。
共通しているのは、何よりも数学を愛していることだ。エルデシュに至っては、数学を愛しすぎたために恋愛に一切興味を示さず、童貞のまま死んだ。早い話が変人なわけだけど、彼のどこまでも自由な生き方が僕の心をくすぐった。お金に執着せず、数学の賞で獲得した賞金をホームレスに上げてしまうエピソードなどは、安物のヒューマニズムとは別の次元にある。名誉欲や権威欲もなく、ひたすらに数学に対する欲望だけがある。
もちろんその欲望の炎を燃やし続ける燃料として、生まれ持った才能と結果がくっついているのだろうけど、朝から晩までわき目も振らずに愛し続けられる対象があることが何より羨ましかった。
Posted by Syun Osawa at 01:03
2007年10月27日
絆=someone=テルミン=マフィア=Radix
亀田親子の関係に親子の絆を見てしまうのは、岡田あーみんの『お父さんは心配性』に親子の絆を見てしまうのと同じだという事を、多くの人は気づいているだろうか? 彼らの姿を笑いながら、どこか羨ましく思っている人がいる。そしてそれは、亀田家の問題とは別の問題である。
ちなみに亀田家の問題とはショボいマッチメイクの問題だけである。
今月の宣伝誌『熱風』(ジブリ)では押井守さんのコラムが巻頭を飾っている。沖縄空手をやっているらしい。「身体」の特集ということで『イノセンス』と絡めて面倒くさい事を書いているけど、ようするに体を鍛えて、別の自信がついちゃったというごくシンプルな話だった。
宣伝誌『ちくま』(筑摩書房)では森川さん、伊藤さん、竹熊さんによるオタク座談会が続いている。思い出話の中では「オタク=イケてない人」「サブカル=時代の波に乗りつつアンテナの感度の高い人」という定説がそれなりに確認されてしまっているようだ。うーむ。
(手に入れた本など)
雑誌『someone 2007.秋号』(リバネス出版)
清水義範『おもしろくても理科』(講談社)
安斎育郎 他『理科離れの真相』(朝日新聞社)
滝川洋二『どうすれば「理科」を救えるのか」(亜紀書房)
矢野健太郎『数学物語』(角川書店)
黒井文太郎『謀略の昭和裏面史』(宝島社)
梅原猛『神々の流竄』(集英社)
沙村広明『おひっこし』(講談社)
紀伊國屋で『 someone 』という高校生向けの科学雑誌を見つけた。今まで一度も見かけたことのない代物だったので調べてみたら、この雑誌はこれまで学生向けに売られていたものらしい。そして10月になって一般向けに書店販売を始めたそうだ。僕の感性にかなり近く即購入した。『RikaTan』があと一歩な感じなのに対して、こちらは少なくともビジュアルイメージはいい感じ。しかも300円とかなり安いので、ひとまず定期購読決定(つっても季刊ですがw)。
テルミンの原理詳解
ニセ科学でお馴染みの菊池誠さんによるテルミンの原理解説。各所で話題の『大人の科学 miniテルミン』は結局買わなかった。音が好みじゃなかったのだ。フィルターをかませばいいだけの話かもしれないのだけど。
ハロプロ10大ニュース
これにゴマキの弟の窃盗事件が追加されるわけですな。ゴマキの弟はタトゥーの入れ方が半端なかったので、マジで極道になったのかも。すでに子どもも二人いるらしい。すごい人生だ。
マフィアの生き様 - The Firm
DIGITAL DJ より。最近、北野武さんがヤクザ話をよくしている。ヤクザがいることで成立している地域社会という昔話の類だ。僕もマフィアやヤクザ話は大好きだし憧れもある。ただ『 イタリア・マフィア 』を読むと見えてくるように、それが最良の社会では決してない。
新しい風力発電
WIRED VISION より。「エコ」って言葉が最近とてもファッショ臭くて嫌いになりつつある。そのこととは関係なく、こうした技術革新に夢中になる技術者の姿はとてもカッコいい。
わいせつ質問書いたボール拾わせる
保護者からの抗議を受けて辞職したらしい。辞職のガイドラインは先生が生徒に無理やり痴漢したとか、同意の上でもセックスしちゃった…あたりに引くべきだと思う。
ダカーポ休刊
悪い雑誌だとは思えなかったのになぁ…。専門誌か大型の総合誌以外は生き残るのが難しい時代なのかな?
Radix発見☆
しかもニコニコ動画とかで紹介されて別の消費のされ方をしているw MOD時代のRadixっていうのは、その界隈では局所的に有名だった。僕も自分のサイトで何度も感想を書いていたほど。そうした経緯とは関係なくニコニコ動画で受け入れられている姿を見て嬉しくなった。素晴らしい音楽はこうやって広がっていくのですな。
橋下弁護士 × 今枝弁護士
この戦い。橋下弁護士のテレビで見けける笑顔とブログでの徹底抗戦な態度のギャップが凄い。橋下弁護士は各所で批判されているようだが、北野高校でラグビーやってた時点で好感持ってたりする(関係ないか)。
アップフロントがアニメ制作・声優業の子会社を設立
そういうことだったのか! で、公式サイト らしい。やまけんさんと矢口真理さんという不思議な組み合わせの謎が解けた。知らんかった。
テキスト時代の残影に思いをはせるモモーイ
自分もまわりも常に変化し続ける。
同じ場所ではいられない。
性格さえも変わっていく。
もちろん僕も。
そして変わっていないと思うあなたでさえも。
Posted by Syun Osawa at 22:15
2007年10月18日
逃れの街
北方謙三/1985年/集英社/文庫
売れない純文学を書いていた著者が、エンターテイメント志向の小説家に転向して書いた長編第二作ということらしい。小説を読む習慣がないこともあって、北方謙三の小説を読むのは初めてだった。
これ…完全にライトノベルっていうか、キャラクター小説じゃん。モロに。ご都合主義的にいろいろな事件が起こっていく。個々の事件が綿密につながりあう事はなく、それらの事件を土台にしながらキャラクターの魅力を描いていくという感じか。想像していた内容と違ったので、「何じゃコレ?」と思いつつも、途中からグイグイ引き込まれて、何だかんだでサクサクッ読み終えてしまった。
解説で北上次郎さんがストーリー主義に陥っていないと書いていたのが興味深かった。この作品が書かれたのが1980年代前半。その頃はまだ小説界はストーリー主義うんぬんが支配する世界だったのだな。それは今とは完全に逆。今はキャラクター主義に陥っている。そのため、キャラクター主義の萌芽が見られるこの作品は下手すると陳腐な作品と捉えられる可能性さえある。たとえ陳腐であっても、キャラクターが立っていて演繹的に動き回っていて、最終的に面白ければよいというのがこの手の小説の良さでもあると思うので、そういう意味ではそれなりに楽しめたかな。
Posted by Syun Osawa at 00:21
2007年10月14日
とわにみるゆめ。
三浦靖冬/2004年/ワニマガジン社/A5
悲しすぎ。
ロボットと人間の愛が主題。しかもそのロボットは人間の代わりに子どもを生むだけの役割しか与えられていない。このロボットの主である人間(ミクニ)も女性でありながら自ら子どもを生むことを許されず、薬の投薬を受けながら男性として育てられているという悲しい宿命をもっている。
ロボットに微細な感情があるというのは変といえば変だが、そういうSF的な設定とグロめのエロの先にこのような作品が作り出されるところにマンガの面白さはあるんだな。この作品を女性が書いているというのだからそれもまた凄い。
ともかく最後の最後まで悲しかった。
ロボット少女の動力となっていたNTエネルギーが知らず知らずの間に最愛の男の体を蝕んでしまっていたという悲劇。結局二人はどうやっても一緒にいることはできなかったのだ。そんなどこまでも絶望的な二人の間をつなぐ純粋な思い。そんな思いが描いた夢の中でさえも少女の体は男の腕からスルリと消えてしまった。
ロボット少女がセンターの機密事項であったため、男は少女との記憶を完全に消されてしまったのだ。病院で記憶を消された男、しかし男は彼女の一部であった古びたネジを握り締めていた。
本当に素晴らしい漫画。漫画家って凄いね。
Posted by Syun Osawa at 22:25
2007年10月11日
内藤選手おめでとう!
内藤大助選手が亀田大毅選手に判定勝ち。
今回の防衛戦はポンサクレック戦からわずか3ヶ月という強行日程のなかで行われた。最年長王者にとっては体力的にも厳しかったに違いない。それでもフルマークに近い勝利を収めた。
残念ながら、試合内容はあまり良くなかった。
内藤選手が瞼をカットして以降、亀田選手はバッティング狙いと思える突進に終始。完全に内藤選手に試合を支配されていたのに、最後まで打ち合いは挑まなかった。なぜなら打ち合いをすると、内藤選手にカウンターを合わせられるからだ(実際に打ち合いの状態になった瞬間に左フックでカウンターをとられ、亀田選手の足が止まるという状況が何度かあった)。だから返しのパンチが打てなかったのだ。
亀田選手の戦い方は相手を倒すことはできないが、自分が倒れることも防げるというようなものだった。だからひたすら瞼の傷を広げるための汚い接近戦に終始したのだろうか。最終ラウンドには救いがなかった。
Posted by Syun Osawa at 23:33
カリスマ先生の図形数学
山本俊郎/2005年/PHP研究所/四六
これはいい。ホントいい。
中学生のうちにこの本をマスターしておけば、高校入試なんて余裕でクリアできてしまう。出題されている問題は少しハードル高めだが、そのハードルを飛び越えるための解説が上手い。図形数学なんてパズルみたいなもんだし、ぶちゃけいかに解法への道に気付けるかが勝負の鍵を握る。
この本はその気付きの手がかりをつくるためのポイントをおさえているし、そこから答えを導くための方法をアイテムとしてわかりやすく整理している。うーむ。さすがはカリスマ予備校講師。
『 カリスマ先生の数学 ― 7日間で基礎から学びなおす 』はやり直し本の王道といった内容で、なおかつキャラクターを多く登場させて楽しませる雰囲気が強かった。今回はもう少し教材としての要素が強くなっていて、図形問題をガチで解説している。平面図形の問題だけで一冊を割いていることもあり、内容もかなり充実。高校入試を控える中学生が読めばそれなりに効果があるのではないかとも思う。ただし、余裕のあるときにね(夏休みとか)。
導入部分で数学者の生い立ちを簡単に紹介しているのもよい。
数学の教科書には数学者の半生などほとんど記されないが、ピタゴラスがどういう人物であったかといったことも、数学を学ぶ上で実は大事な要素ではないかと思っている。歴史の要素は社会にだけあればいいのではない。教科分けに関係なく、学校で習っているものなどはすべて歴史なのだから、この本のあり方は結構正しいように思った。
Posted by Syun Osawa at 00:11
2007年10月08日
晴香引退?=藤田FLASH=池田ブログ=亀田試合
『ノエイン』の上乃木ハルカ役を演じた工藤晴香さん(ハチクロの方が有名か?)が芸能界を引退したとの噂が流れている。つい最近までWebラジオ「ジャンプ魂」でもパーソナリティをつとめていたし、春ごろまでは雑誌『セブンティーン』のモデルもやっていた。
妙にローテンションな芸風とか好きだったので非常に残念。
残念といえば、若桑みどりさんが亡くなられた。ちくま学芸文庫から出ている『戦争がつくる女性像』と『イメージを読む』は 戦争と芸術 において重要なんだけど、まだ読んでいない。戦争と表象 というイベントで講演を聴くことができなかったことが悔やまれる。
(手に入れた本など)
『アニメーションノート no.7』(誠文堂新光社)
ジョー・サッコ『パレスチナ』(いそっぷ社)
山本明利ほか編著『新しい高校物理の教科書』(講談社)
小学教科書『新版たのしい理科 3年』(大日本図書)
竹内均 編『理科系雑学』(三笠書房)
山口幸夫『新版 20世紀理科年表』(岩波書店)
辻哲夫『日本の科学思想』(中央公論社)
柴岡泰光『数学はともだち』(岩波書店)
H.スワン&J.ジョンソン『数学が驚異的によくわかる』(白揚社)
今野紀雄 監修『「微分・積分」を楽しむ本』(PHP研究所)
矢野健太郎『数学ふしぎ・ふしぎ』(新潮社)
神林長平『Uの世界』(早川書房)
藤田麻衣子×FLASHなコラボ
KOKIAの「ありがとう」現象を逆に利用したような形。FLASHを使っているということで反応したわけではなくて、ここで「ただいま」という曲が聴けることを知ったので。この前のライブ で聴いてちょっとしびれた。
「就職氷河期」はなぜ起こったのか
ようやく精度が上がってきた感のある90年代研究。振り返ると、何だかんだで自民党に対抗する共産党や社会党の主張も誤っていたことになる。共産党や社会党は「お年寄りいじめ」については叫んでいたが、結局誰も若者を救おうとはしなかった。その結果、非正規社員は増大したのだ。そしてこの流れは止めることはできない。
そもそも共産党や社民党の支持者が高齢なのだから若者のためになることをするはずがない。彼らは年寄りとともにその役割を終える政党に成り下がっただけである。
偽装請負から考える雇用形態の未来予想図 や そのつづき など読むと、雇用のあり方がどうあるべきかということを深く考えさせられる。
和毅のメキシコ大会!の全貌
ちょっと説明口調過ぎじゃね? 誰も本人が書いているとは思ってないけど、さすがにライター臭が出すぎではないかな? しかも内容が2ちゃんの和毅スレと完全リンクしてるのが興味深い。
今週いよいよ内藤大助×亀田大毅の試合がある。
僕も多くの人と同じように内藤が大毅をボコボコにする姿が見たい。でも、一発のパンチで内藤が負けることだってある。それがスポーツであり真剣勝負なのだ。少なくとも弟はその真剣勝負の舞台に上がる。このことは、10月8日の時点で25日の試合の対戦相手すら決まらない亀田興毅とは大きく異なる。25日の試合はどうせ興毅が勝つに決まっている。一方、大毅の試合はどちらが勝つかわからない。この一点において僕は興毅より大毅の方が真にプロボクサーであり男だと思っている。
Posted by Syun Osawa at 00:28
2007年10月05日
okamagic-002展
2007年9月15日-9月30日/GoFa青山
GoFa青山という青山BC近くにある小さなギャラリーで開かれていたokamaさんの展示会へ行った。今回が2回目らしい。
色彩神だよな。マジで。
会社でオッサンに色設定頼まれて、まぁ僕もオッサンなんだけど、オッサン二人してどうでもいい商品(とも言えないような代物)の色について話してることが本当にバカバカしく思えてくる。色はこれくらい幸せにあるべきなんだよ。パァッと幸せな感じで咲いてる方がいい。もうそれだけ。
グッズとしてタンブラーが売ってた。タンブラーを知ってる人ならわかると思うけど、あれはコップ本体と透明なプラスチックの間に紙入れてるだけだったりする。それでも欲しくて欲しくて、でもそれを会社に持っていたときに受けるであろう社会的制裁(ごめん)を考慮して、買わずに帰ってきた。でもちょっと欲しかったな。
Posted by Syun Osawa at 00:26
2007年10月03日
藤田麻衣子ライブ from フリーライブ vol.9
2007年10月2日/JANIS SPACE
サインもろた☆
ここ最近、家で何か作業をするときは、藤田さんの1stアルバム『会いたい』をひたすらループしていた。聴いているととても穏やかな気持ちになるのだ(MySpace.com で聴ける)。
そういう経緯もあったので、近い位置で生歌を聴けてめっちゃ感動した。やっぱライブって重要やね。そして、女性のシンガーソングライターは最強。代表曲「恋に落ちて」などのバラードも強力だった。
…と持ち上げつつも、僕が藤田麻衣子さんの曲を好きになったのは上記のようなバラードにハマったからではなく、「ベイブリッジ」や「夜明け前、君と」のようなアップテンポの曲がいい感じだったからだ。
アップテンポな曲をつくれる人、ポジティブな曲をつくれる人、それで聴く人を楽しい気持にさせられる人、このあたりに引き出しを持っているか否かが好きになるかどうかの物差しだったりする。綺麗なバラードつくる女性のシンガーソングライターはものすごく多いし、また名曲も多い。だけどバラードに引っ張られ過ぎる感がいつもしている。そんな中、今回のイベントでは1曲目に「夜明け前、君と」が聴けてかなり嬉しかった。
コンサートもやるらしい。今のところ弾き語りや弦楽器とのコンビなどが多いようだけど、バンド編成のライブをやる機会があるならそのときには絶対行こうと思う。ともかく良かった。
他にもStardust☆Trainと堀川ひとみさんのライブを鑑賞。音楽をやる人は総じて尊敬してる。みんなカッコいい。
Posted by Syun Osawa at 01:11