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2012年06月21日

諏訪流放鷹術の実演 1回目

2012年1月2日/11:00−12:00/浜離宮恩賜庭園

諏訪流放鷹術の実演 1回目

昨年は開演直前に行ったので場所が確保できず上手く写真が撮れなかった。カメコにとって場所取りがいかに重要かを思い知らされたので、今回は1時間半ほど前から待機。コミケで慣れているとはいえ、この時期に屋外で長い間待つのは辛かった。

その苦労のかいあって場所は完璧だったのだが、今度はシャッターが上手く切れなかった。CANONのKissX4という安物の一眼を使っていることを言い訳にするのは簡単だが、それ以前にどういう風にシャッターを切ればいいのかわかっていなかったことを反省。ほかの上手い人を見ると、ある程度鳥の動きを予測して撮っている。

ファインダー越しに動いている鳥を馬鹿正直に追いかけていては鳥の姿を見失ってしまうので、ファインダーから目を離して鳥を探さなくてはならない。鳥はスピードが早いので、一度見失った後にもう一度その姿を捉えるの容易ではない。今回の一番のメインイベントであるハヤブサの飛翔でもハヤブサの姿を見失ってしまい、探しているうちに実演が終わってしまった(昨年も失敗)。これが来年の課題だ。

諏訪流放鷹術の実演 1回目

諏訪流放鷹術の実演 1回目

諏訪流放鷹術の実演 1回目

諏訪流放鷹術の実演 1回目

鳥みたいなスピードの速い動体を撮るにはまだまだ修行が足りないことを実感。

Posted by Syun Osawa at 23:59

伝わる!文章力が身につく本

小笠原信之/2011年/高橋書店/A4

伝わる!文章力が身につく本もともとこのブログは文章が上手くなるために始めたのだ。書き始めた当初は少しは上達している感じもあったのだが、最近はそういう感じもまったくせず、以前より下手になっているような気もする。

その一番の理由は、考えずに書いているからで、出来上がった文章はほとんどまとまりのないものになっている。優秀な人ならば考えずに書いてもそれなりのところに収斂されていくのだろうが、下手糞が書くとそうはいかない。しかも、理系脳の弊害なのか読んでいて楽しいような味わい深い文章にもならないので、読みにくい断片的な文章がグチャっと集まっているだけである。

だったら考えて書けよということになるのだが、いちいち構成を考えていては今度は書く気力自体が失せるのだ。不思議なもので、考えずに書き始めて、書き終わる頃に何となく考えがまとまってるくらいがちょうどいい。だから、このブログに書かれている文章というのは本当にチラシの裏に書き付けられたような文章なのである。

そんなわけで、何も考えずに書くスタイルでもそれなりにまとまった文章に仕上げるための本を探していたら目に留まったのがこの本だった。文章力を上げるための本の多くは、構成を考えて書けと書かれているものが多く、僕の意図とは反する。この本はそうした文章を書く上での大前提よりも、「〜が」を何度も続けるのはよくないとか、似たような文章は一つにまとめろといったような初歩的で技術的なことを丁寧にレクチャーしてくれていて勉強になった。

Posted by Syun Osawa at 23:27

下町ロケット

池井戸潤/2006年/文芸春秋/四六

下町ロケットシャイロックの子供たち 』、『 空飛ぶタイヤ 』に続いて、3冊目の池井戸小説。直木賞受賞作だそうな。

ストーリーは前に読んだ2作よりシンプルだった。宇宙科学開発機構の研究員だった佃航平が、中小メーカーの社長としてロケット開発の夢にもう一度青春を捧げるといった内容。青春モノにとって重要な後半のドライブ感(ラストに近づくにつれて話がグッと盛り上がっていく感じ)が強く、一気に読み切ってしまった。

池井戸さんの小説は僕の仕事感を刺激するようなエピソードが満載なので、今回もいろいろ考えさせられた。僕の場合、仕事は生活費を得るためと割り切ってしまっていることもあって、仕事に夢を乗せるというようなことがなかなか出来ないでいる。より短時間でより効率よくお金を稼ぎ、あとの自由な時間で自分の好きなことをしたいと考えているためだ。

この小説では会社の持っているやや古臭い運命共同体(コミュニティ)として機能を再評価し、そこに人生のドラマを乗せている。たしかに自分の生きがいが仕事と重ね合わされ、それが成功へのプロセスとリンクすれば最高だと思う。僕もこういう風に仕事がしてみたいと思ったし、読んでいる間ずっと胸に熱いものがこみ上げていた。

ただ、これが可能なのは会社の事業が進んでいる方向と、会社のコミュニティとしての機能がリンクしているからだとも思える。そして、ここがリンクしていないのが今の会社の姿だとも思えるので、コスト切り詰めだけが至上命題となっているような会社の人が見る夢というのもまた見てみたい気もした。

Posted by Syun Osawa at 23:11

2012年06月20日

空飛ぶタイヤ

池井戸潤/2008年/実業之日本社/四六

空飛ぶタイヤシャイロックの子供たち 』を読んで「面白い」とつぶやいたら、池井戸潤さんの事務所の方が『 シャイロックの子供たち 』は池井戸が最も気に入っている小説だという主旨コメントをくれた。そのときに『BT '63』を薦められたのだが、『空飛ぶタイヤ』が彼の著作の中でも特に話題になった本ということもあって、先に読むことにした。

シャイロックの子供たち 』同様にサラリーマンの悲哀がとてもよく描き出されていて、まるで自分のことのようにキャラクターに感情移入しながら読んでしまった。自社のトラックがタイヤ脱落事故によって死傷者を出し、倒産の危機に陥るという状況下で人はどのような行動に出るのか。この部分が他人事のようには思えなかった。

例えば、会社が倒産の危機に陥ったとき、若手のホープだった課長はさっさと辞めてしまう。その一方で、今まで人付き合いも悪く生意気だと思っていた整備士が事件解決のために重大な役割を果たす。普段は覆い隠されている人の心の中心部分が、ピンチに陥ることで露になってくるのだ。

社会というのは人とのつながりによって成立しており、そこにはコミュニケーションが介在する。特に日本ではこのコミュニケーションを調和の方向に、悪く言えば事なかれ主義の方向に働かすような空気が充満しているように思う。そうした空気の中にタイヤ脱落事故が投げ込まれたとき、その空気を元に戻すことを優先する人と、事故に真摯に向き合う人とで温度差が生まれてしまう。そして、この温度差こそが普段、調和のコミュニケーションによって覆い隠されている同じ顔をした人々の人生観の多様性なのだと思う。こうした状況下で僕ならどういう行動に出るだろうか? そんなことを深く考えさせられる小説だった。

Posted by Syun Osawa at 23:25

シャイロックの子供たち

池井戸潤/2006年/文芸春秋/四六

シャイロックの子供たち「最近、小説読んでないなぁ〜」と思ってとりあえず何か読もうとネットで読書レビューなどを漁っていたら、最初にフックに掛ったのが池井戸潤さんの本だった。彼の小説はそれほど難解ではなく、ストーリーが面白く、サラリーマンが共感できるということらしい。うん僕向きだw 人気のある『 空飛ぶタイヤ 』や『下町ロケット』はページ数が多いので、比較的サラッと読めそうなこの本を最初に読んでみることにした。

いやーびっくり! 面白い!

ミステリーっぽい内容なのでストーリーは伏せるが、銀行の現金紛失問題という小さな事件をきっかけに大きなストーリーが展開していくドライブ感がヤバかった。また、各章ごとに違う登場人物が主人公になっていて、それぞれのキャラクターの職業上の立場や人間関係に絡んだサラリーマンの悲哀みたいなところも共感できる部分が多かった。一級の娯楽小説というのはこういう本のことを指すのだろう。

サラリーマン小説に共感するとかいよいよ僕も本格的におっさんなんだと改めて実感w そして、おっさんのモチベーションを上げるためのブースターとしてサラリーマン小説はちゃんと機能していることも知った。次は分厚いからと敬遠した『空飛ぶタイヤ』あたりを読んでみようと思う。

Posted by Syun Osawa at 23:20

すべては「裸になる」から始まって

森下くるみ/2008年/講談社/文庫

すべては「裸になる」から始まって花村萬月氏の解説が、AVの内容は知らんけど彼女には文才がある、というほめ方をしていて、ネットの感想なんかを見てもそういう世論が作られている。それはそれでいいことなのだろうけど、AV女優としての森下くるみファンとしてはその手の空気はちょっと物足りない気もするね。

僕は初期の森下くるみ作品はほとんど見てると思う。一番好きなのはドキュメンタリー風の『AV女優』で、あれほどいろいろ考えさせるAVはなかったなと今でも思い出すほどだ。

この本ではデビュー当時の様子や撮影の裏話、恋愛に関する話などが包み隠さず書かれていて、彼女のシュートな一面を垣間見ることができる。その中で最初に面接に行ったAV制作会社で落とされたというエピソードが書かれていて、こんなに可愛い子でも落とされるのかとちょっとビックリした。もっともデビュー作の『うぶ』を見れば、それもあり得るな…と思わせるのだが、じゃあなんでAV女優になろうと思ったんだ? みたいな動機の部分は曖昧に書かれていて、そこは最後までぼんやりしたままだった。

もっとも、その曖昧こそが現代社会を映しているはずで、それは何もAVという職業に限った話ではない。僕だってなんで今の仕事をやってるのか? みたいなことに明快な答えを持っているわけではないしね。

Posted by Syun Osawa at 23:15

思考の補助線

茂木健一郎/2008年/筑摩書房/新書

思考の補助線何気に初茂木健一郎な気がする。彼の本は『脳と仮想』から読むと決めていたはずだったのだが、なぜかこの本を読んでしまった。この感想文が読了後5ヶ月以上経過してから書かれている(えw)こともあって、正直どんなことを書いているのか覚えておらず、もはや忘却録としても機能していないところが悲しいのだが、「補助線」という言葉に引かれて読んだことは間違いない。

数年前に宇野常寛さんの『 ゼロ年代の想像力 』を読んだときに、古い想像力と新しい想像力を補助線で分けていて、おそらく僕はこれが頭に浮かんだのだ。そして、手がかりのないゼロ年代の空気を掴むためのきっかけとして必要な作業のように感じたのだろう。

内容的には「茂木さん頭いい!博学!」という部分を除けば、「自分でよーく考ろ!」という類のアジテーション本だった。モチベーションを上げるための本と言えばよいか。茂木さんはそういう文章を書くのがとても上手で、彼のブログを読んで勇気付けられることも多い。

「根拠もなくモチベーション上げてどうすんだ?」的な突っ込みは当然の反応だと思うが、僕のように落ちぶれたサラリーマン生活を送っていて、それでも少しはクリエイティブに生きたいなぁ…とどこかで思っている人間には、案外この手の本は機能するのだ。そういう意味では読んでよかったと思えた本だった。

Posted by Syun Osawa at 23:09

2012年06月14日

コミックマーケット 81

2011年12月29−31日/10:00−16:00/東京国際展示場

コミックマーケット 81今回も 前回 に続いて2日間参加した。

2日間参加する理由がカメコというところがアレな感じではある。でもアニヲタでカメラにハマってしまったら、こんな楽しい場所はないんだよねw

コスプレしてる層も随分広くなって、老若男女はもちろんのこと外国の人のコスプレも目立つようになってきた。そういう薄まり方がいいのか悪いのかはわからないけど、ともかくコンテンツとしてのコミケは星の最後と同様に終末へ向けて絶賛拡大中!といった雰囲気であることは間違いない。

カメコとしては、Tamronの17−50mm F2.8を買ってからほとんど使わなくなっていたCanonの50mm F1.4を久しぶりに使用。明るいレンズを持っていってもどうせ絞るんだから意味ないんだけど、絞ったあとの写りを比べると単焦点のほうが好みなんだよね。でも、人が混み込みで距離のないコミケではやっぱりしんどい(当たり前か)。値段も安いのでCanonの35mm F2.0を買い増すかな…。

以下、戦利品。

JH科学 本5冊+ポスター3枚セット
斧屋『アイドル、なんか。』
フラクタル次元『エロマンガノゲンバ vol.5』
CFA研究所『偽!マケン姫!』
兎耳庵『ライトノベル×デザイン』

Posted by Syun Osawa at 01:23

2012年06月13日

L.E.D.「Music For Cinemas e.p.」リリースパーティー

2011年12月27日/19:00−23:00/渋谷WWW

11月に ROVO×SYSTEM7のライブ を見たとき、今年はこれ以上のライブはないなと思ってたけどまだあった!みたいな。しかも、入り口で未発表音源の入ったCDまでもらって大満足。今年もくだらない労働で日銭稼いできてよかったと思ったね。

彼らを知ったのはめっちゃ最近で、exPoP!!!!! vol.49 が最初。そこでハマって 6月のワンマン に行って、今回が3回目!

ROVO同様にTVサイズに縛られていない曲の展開も、ツインドラムの野太いリズムも、伸びやかなホーンの音色も、その全部が僕には心地よかった。また、渋谷WWWは見やすいし、天井も高いので、壁に映し出されたタナカカツキさんのVJも栄えた。おいしい料理は素敵な空間で食べたいと思うはずで、そういう意味でもWWWというライブハウスはL.E.D.の音の領域を押し広げるのに最適だったように思った。

L.E.D.の前にやったMaNHATTANとDorianのパフォーマンスもカッコよかった。Dorianさんは、やけのはらさんとの楽曲と七尾旅人&やけのはら「Rollin' Rollin'」を聴いている程度だったので、あんなに長い尺で叙情的なダンスミュージックを演奏される人だとは思っていなかった。おっさん得なダンスミュージックだわw とりあえずアルバム2枚は必ず聴くことにする。

Posted by Syun Osawa at 00:00

2012年06月12日

「x 〜 PARK OF THE SAFARI」リリースイベント

2011年12月26日/20:00−20:30/タワーレコード渋谷

昨日 に続いて、Aira MitsukiとSaori@destinyのリリイベ。さすがに昨日の盛り上がりと比較してしまうとね…。CDの販促イベだから仕方ないんだけど。

仕事が終わってタワレコ渋谷に行ったら、入り口にスマイレージの巨大ポスターが掲げられていた。そこに写っている前田憂佳さんの姿を見て、今月でもう見れなくなるんだなぁとしみじみ。グループアイドルとしてこれから伸びていく時期に、グループの中で最も重要な人物が抜けることのインパクトはあまりにも大きすぎるよね。

昨日はただひたすら高まるだけだったので、今日は少し落ち着いてパフォーマンスを見ていた。企画優先のコラボ企画にしては新アルバムはとても素晴らしいと思う。目新しさを求めたエキセントリックなだけのものだったり、カバー楽曲中心の守りに入ったものだったりということはなく、ダンスミュージックの現在をしっかりと見据えた形でパッケージ化されている。しかも 昨日のライブ ではその質を落とすことなく、一回性のパフォーマンスに等価交換されていた。

今日のMCでAiraとSaoriのコラボはこれで最後と言っていた。来年の2月12日の渋谷Glad2周年ライブでは両方とも名前が載っているが、ここでもコラボは実現しないのだろうか。もったいないなぁ。

アルバムの「PANAMA」という曲。コメント欄でもJAMICAやらBreakbotやら書かれているが、そのあたりの音楽を直結させてるところに彼女たちの音楽の真骨頂があると思う。これはつんくが80年代のソウル・ファンク系のディスコ歌謡をアイドルの曲に直結させてるのと同じ手つきだ。

ただ、そう考えると唯一足りないところがある。つんくの曲は何を持ってきてもつんくになるのに対して、デートピアノ曲にはそれがない。ダサかろうが何だろうが、パクりだろうがそれでも残る固有性みたいなものがつんくの曲にはあるのだ。では、デートピアはどうか? Saoriの曲には歌詞の部分にそれがあるように思う。

Posted by Syun Osawa at 23:53

「x 〜 PARK OF THE SAFARI」リリースパーティー

2011年12月25日/18:30−20:40/渋谷Glad

x 〜 PARK OF THE SAFARI過去最高の攻め方!

Aira Mitsuki×Saori@destinyのコラボライブが24、25日の2日連続で開催された。24日は 東京女子流のクリスマスライブ に行っていたので25日だけの参加だったのだが、24日も行っとくべきだったと後悔するほど充実したライブだった。

というのも、通常のライブではAiraがバックダンサー2人、Saoriがキーボード2人を従えた編成でパフォーマンスを行う。しかし今回は、AiraとSaoriの連名でリリースした「x 〜 PARK OF THE SAFARI」というアルバムのリリースパーティーということもあって、それらがミックスされた形でライブが行われたからだ。

グループアイドルが全盛の時代にあって、数の上で劣るソロアーティストはどうしてもステージ上が寂しくなってしまう。これは音楽の良し悪しとは関係のないところで作用してしまう身体的な何かである。そして今回、音楽だけでは乗り越えられなかった数の問題がステージ上に6人上がることで補われ、結果的に豪華なステージを演出していた。そういう意味でも「x 〜 PARK OF THE SAFARI」は二人にとってとてもキーとなるようなアルバムになったと思う。

しかも、冒頭に書いたように二人とも攻めの楽曲を立て続けに披露し、ひたすらにアッパーな音が場内を埋め尽くしていた。もうずっと上がったままw アイドル見て高まってたのともROVOの最前で高まってたのとも違う、何というかその両方をを手加減なしにぶつけたような感じの高まり方w いやー楽しかった。このライブこそDVDに残しておくべきだったと思うよ。

Posted by Syun Osawa at 23:46

2012年06月03日

大局観 自分と闘って負けない心

羽生善治/2011年/角川書店/新書

大局観 自分と闘って負けない心将棋の天才・羽生義治さんの『決断力』を読もうと思って書店に行ったら、新しい本が出ていたのでこちらを読むことに。将棋の勝負どころで、複数ある選択肢の中からいかにして一つを選ぶか。こういう難問に対して羽生さんの考えを披露した本だった。

面白かったのは、経験を単純なデータベースの充実と考えていないところだ。若い頃にあったパワフルな頭の回転は歳を追うごとに失われていく。しかし、多くの対局の経験で養われた(というか体にしみついた)感覚は残っていて、その感覚が勝負どころでちゃんと機能するのだ。

もちろんこれは誰でもそうだということではないだろう、プロ野球選手でもベテランになってからも技巧はとなつてそれなりに成績を残す選手がいるが、大抵の人は能力が落ちてそのまま引退していく。これを才能ゆえだと結論付けるのは簡単だが、僕のような下々の人間への教訓として、日々の努力の積み重ねによる成果だと捉えなおすことも可能だろう。

羽生さんは常に自分と向き合っている。これはなかなかできることではない。サラリーマンをやっていると、歳を追うごとに社内的な政治に巻き込まれるなど、様々な人間関係の中で相対的に何かを成し遂げようとする。これはある意味仕方のないことではある。しかしこれが行き過ぎると、周りへの目配りが効き過ぎてしまい、勝負どころで自分の力で何かを決断することが極めて難しくなる。

もちろん、サラリーマンの日常生活はプロ棋士の真剣勝負とは別ステージなのでこれを単純比較することはできない。ただ、コミュニケーションによる解決ばかりを重要視し、自分で考えるということを怠ってしまえば、おそらくこの本のタイトルになっている大局観というような視点は絶対に出てこないのだと思う。

Posted by Syun Osawa at 23:56

おいしいから売れるのではない 売れているのがおいしい料理だ

正垣泰彦/2011年/日経BP社/四六

おいしいから売れるのではない 売れているのがおいしい料理だ久しぶりに本の感想文を書くなぁと思ったら、1月29日の小林正弥『 サンデルの政治哲学 ―〈正義〉とは何か 』以来だった。もっとも、感想文を書くタイミングが半年ほど遅れているので、今回の本を読んだのも実際には昨年の12月だったりするのだがw

本書は貧乏リーマンや貧乏学生ご用達のファミリーレストラン、サイゼリアの創業者が書いた本。あまり期待せずに読み始めたらこれがなかなか面白く、昨今チビチビ読んでるビジネス関連の本の中では一番刺激を受けたかもしれない。

まずサイゼリアの創業当時の話が面白い。東京理科大の学生だった正垣氏がサイゼリアをオープンさせたのは八百屋の二階だったそうな。しかし、当時は全然客が来ず、このままでは店が潰れると考えた正垣氏は、少しずつ値段を下げていき最後は7割引にした。すると客が一気に増えたというのである。

つまり、客が入る価格に合わせて、コストを調整していく。一見無茶苦茶な方法に見えるかもしれないが、僕には素晴らしい方法に感じられた。

というのも、僕の会社にはスティーブ・ジョブズはいないからである。もちろん僕にもそんな才能はない。才能のない人にイノベーションを起こすことは難しい。やれることといえば、品質の向上とコスト削減くらいである。サイゼリアはこの二つを既存の慣習を飛び越えて徹底的にやっているのだ。これなら僕にもできるかもしれない。そう思わせるような本だった。

友達いわく「サイゼリアのコーヒーは泥水」だそうで、僕もそれは否定しない。それでも、その泥水をコーヒーとして売ったところがサイゼリアの凄いところで、価格さえおさえられていれば、客はそれをコーヒーだと思って飲むのである。

Posted by Syun Osawa at 23:50