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東京 JAZZ 2002 に見たフーチャー・ジャズの挑戦

 僕はジャズを知らない。

 しかし,東京 JAZZ はとても興味深いイベントだった。最初に登場したのは ニルス・ペッター・モルヴィル というトランペッター。僕的な解釈だと思いっきりテクノだ。「ズン・チャチャ・ズン・チャ」みたいなのはもう昔の話なのか,DJ が入っていて,ドラムンベースとかアンビエントに融合されて奏でられるトランペットの音は,クラブ的な側面から見るとそのクオリティは桁違いだった。そして僕は,新しいジャズの潮流を見るのである。

 続いて登場は 小林桂。日本では有名な彼も,今回は完全な敗者になってしまった。彼は歌が上手い。でも,日本人の中で歌が上手いのだ。彼の歌うスタンダードジャズは僕には退屈なものだったが,ジャズとはこういう音楽のことを言うのかもしれない。しかし,次に出てきたオマーラの歌声が,素人にもわかりやすい形で日本人のボーカリストとの差を見せつけてしまった。

 結果的に言うと,今回のイベントは大成功とは言えないと思う。その最も大きな原因が客層と音楽スタイルのミスマッチだ。今回のイベントは,昨年にクラブサイドのアルバム『 FUTURE 2 FUTURE 』をリリースした巨匠ハービー・ハンコックのプロデュース。単刀直入に言うと,僕が当初イメージしていたところのジャズのイベントではなかったのだ。

 アリーナ席は全席指定。しかもど真ん中の席は椅子がゆったり座れる上等な椅子。ブルーノートのように落ち着いて座って見れるイベントの形式。客層もそれ相当な年齢の客が多かった。当然スーパーシートがある一番最前列にはお金持ちの高齢者が。ここで,このイベントがミスマッチをおこしたのである。

 テクノやクラブサイドに近いジャズフェスにあって,本物の音楽世界によって会場を大歓声の渦に包み込んだのは,ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブだった。小林桂のパフォーマンスのあとに登場したブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブは,明らかに他のパフォーマーとは違っていた。いわゆるラテンをベースにしたゆったりとして,ソレでいてリズミカルな音世界は会場全体を一瞬にして異世界へと運んだ。

 高年齢者の演者によって奏でられるラテン・ジャズの中,満を持してオマーラが登場した。そして,年齢からは想像のつかない凄まじい声量が,会場を圧倒した。これは本当に感動だった。ライブ映像 からもその一端は知ることが出来る。オマーラの歌声に一頻り酔いしれた後,このイベントで最も名をあげた男,ロベルト・フォンセカがゲスト・ピアニストとして登場する。

 オマーラに紹介されて登場した彼は,黒のスーツとハットという『ビリージーン』の頃のマイケル・ジャクソンのようないでたち。一言も語ることなく,ピアノの前に座る。

 彼のピアノは凄かった。僕はジャズのことはよくわからないが,会場にいた誰もが魅了された。これを言葉で説明しても安っぽくなるだけなので,多くは語るつもりはないが,彼のピアノはぜひ聴いていただきたいと思う。

 彼はブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブのツアーに同行しているものの,彼自身はドラムン・ベースなどを取り入れた先進的なジャズのスタイルの楽曲も作成している。その辺は これ を聴けば少しわかる。

 今回のイベントを適当に総括すると,アリーナは全席指定で,しかもほぼ全員が着席していたため,たって踊りたい若者は一番後に集まって踊っていた。最前列は座って,最後尾は立って踊る。実に変な光景だった。僕らも立って盛り上がりたかったのだが,会場の雰囲気がそういう雰囲気ではなかったので,踊れる音楽だったにもかかわらず座っているという不思議な感じ。まぁ,ジャズってのはそれが普通なのかもしれないが。まぁ何にせよジャズ初体験だったので,こんなもんかも。

 結果的に言うと,最も盛り上がったのはブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブ。全員をスタンディングさせてパフォーマンスしたのは彼女たちだけだった。でも,ソレはひとえにオマーラのパフォーマンスの技術。音楽性どうのというよりは,彼女のキャラクターで盛り上げたといっても過言ではない。

 長々と,まったく冴えないレポートでした。

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Composed by Syun Osawa since 10.1997