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東京国際ファンタスティック映画祭 2003 レポ

東京ファンタスティック映画祭 2003

 2003 年 11 月 03 日,新宿ミラノ座で行われた 東京国際ファンタスティック映画祭 2003 アニメセレクション(以後,東京ファンタ)を見に行った。司会は BEE-HIVE でもお馴染みのニッポン放送・荘口彰久アナ。

 今回のお目当ては,Production I.G の『 DEAD LEAVES 』と大友克洋監督の『 スチームボーイ 』パイロット版。前者は来年公開を予定している作品の先行上映,後者は延べ 6 年以上も作り続けている作品のパイロット映像を本邦初公開ということだったので,これだけで 1500 円の元は十分とれたと思う。

 アメコミと日本のドタバタ漫画の華麗な融合DEAD LEAVES

 10 時 30 分に開演して初っ端に上映されたのが,なんと I.G の『 DEAD LEAVES 』だった。12 歳以上推奨のこの作品は,アントニオ・バンデラスの『デスペラード』並みのドンパチが 50 分も続いた。… 50 分の作品でだ。

 僕はドンパチ物は大好きだが,舞台挨拶で監督が「 50 分なら見れるだろう 」と語っていたとおり 50 分が限界の映画。ドンパチは気持ちよかったのだが展開に抑揚がなかったので途中でダレる感じがあったのが残念なところ。

 しかし,それ以上に残念だったのは劇中音楽。この絵にトランスは無いだろうというのが正直な感想だ。エンディングのテロップで音楽を確認すると,音楽を担当したのはなんと DJ SHINKAWA 氏だった。もうちょっとミニマルなテクノを『チョナンカン』のような感じで当てたら引き立ったのにと思わずにはいられない。DJ SHINKAWA 氏のプレイは新宿の CODE などで何度か見たことがあるが,バカ騒ぎするにはいいんだけど…今回はどうでしょう? 音楽については個人差があるので,見て判断していただきたい。

 自主製作動画と商業動画のハザマでSynapi

 インディーズアニメという 新しいジャンルに挑戦する ゲノムエンタテイメントの新作『 Synapi 』について。舞台挨拶に登場した監督・池田爆発郎氏のキャラがあまりに微妙だったので,作品の内容を危ぶんだが,これが結構面白かった。

 今回上映されたのは『 Synapi 』の前半部分で,バラバラだったそれぞれのストーリーが一つにまとまりだすところまで。主人公がそのまま『千と千尋の神隠し』のカオナシ変形版といった印象だったので,イントロ部分はちょっと受け入れがたい感じだったが,その他のキャラクターが会話を交えて動き出すあたりから徐々にストーリーに深みが出てきた。

 この作品はいわゆるセルアニメ風シェーディングを施した 3D アニメーションだ。筆者が最も注目している分野でもある。そのため,この世界観に徹していれば違和感無く物語に没頭できるのだが,途中でレンダリングの方法が変わってたり,各キャラによって 3D モデリングの精度にバラつきがあったりと気になる点も多かった。「インディーズだから」と言ってしまえばそれまでだが,これからドンドン活躍が期待できる人だけに,絵の完成度にはより一層の力を注いで欲しいものだ。

 超時空要塞はどこへ向かうのか?マクロス ゼロ

 今回のイベントで一番客が多く,声援が多かったのがこの『マクロス ゼロ』だ。マクロス誕生から20年以上が経過し,変形バルキリーと美樹本晴彦が描く美男美女の愛憎劇というだけでは済まされないところまできてしまった感がある。河森正治監督の舞台挨拶を聞きながら,「この人って,学生時代からマクロスやってんだから,墓石は絶対マクロスだろうなぁ…」なんてくだらない事を考えるくらい,僕の中ではどうでもいいものに成り下がってしまった。

 今回上映されたのは 11 月末に発売予定の『マクロス ゼロ』第三話。そのため,内容については全然わからない。ただ,今回はロボットは 3D によるリアル系のレンダリングを使用しており,GONZO 同様のセルアニメと 3D アニメの微妙な合成をやっていた。セル風シェーディングをあえてしないこの方法は少しずつ市民権を得ている感があるが,僕にはどうしてもその違和感を埋めることができなかった。

 歳かな…。詳しいことは 河森氏のインタビュー をどうぞ。

 近未来 SF アニメの超新星プラテネス

プラネテス

 正直,『オネアミスの翼』を超えていると思う。舞台挨拶に立った谷口悟朗監督が「マニアックな漫画の世界を,大勢の聴衆の人が見れるように幅を広げたい」と語っていたとおり,その内容は非常にシンプルかつ明快だった。今回の映画祭で舞台挨拶にあがった監督の中で一番理屈っぽくマジメであったが,作品からはその真摯な作品への取り組みがイヤというほど伝わってきた。

 宇宙のゴミ掃除屋という設定は一般視聴者にはとっつき難いものであるが,個性的なキャラクターの会話劇が設定の難しさを柔らかなものにしている。そしてまた,観念的で抽象的になりやすい言葉それぞれを丁寧につなぎとめ,物語として一つの方向へいざなっている。

 僕はまだ第一話しか見ていないが,近年の商業アニメの中ではかなり思想の高い作品ではないかと思う。こんな素晴らしい作品が BS でしか放送されないというのが残念でならない。ぜひとも NHK の深夜で放送してもらいたいものだ。

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