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バンパイア・ハンター D

Vampire Hunter D

 レンタルビデオ屋に行ったら『攻殻機動隊 STAND ALONE COMPLEX 』が貸出し中だったため,その「つなぎ」として見ただけ。ところが,これが思いがけず凄かった。日本のアニメ産業の懐の深さを,まざまざと見せつけられた思いである。

 『バンパイア・ハンター D 』は SF 作家・菊池秀幸の代表作で,僕が中学校だった頃,爆発的なブームを起こしていたライトノベルの名作だ。人間と吸血鬼のハーフである主人公 D がバンパイア・ハンターとなって人間のために戦うという,年寄りには馴染みにくい設定だが,このアニメ映画は一切手加減していない。

 いきなり『 D 』の世界なのだ。むしろ D の世界を忠実に再現することを主目的に作られており,小説を読んでない人には何が何だかわからない。しかし,ハードボイルドで冷たい世界である事を観客に鋭く訴えかける素晴らしい始まりだった。

 そして,同業者のバンパイア・ハンター,バルバロイの里の怪人,そして貴族と一見理解しがたい人物が次々と登場し,説明も無くストーリーが進展していく。観客にとっては少し突き放された展開であるが,そこがまた無遠慮で冷徹な D の世界を上手に演出している。しかも凄いことに,そうした難解な設定を,最後には完全に理解できるところまで自然に誘導しているのだ。説明臭いシーンがいくつか登場するが,それはそうせざる得ない箇所として容認できる範囲だった。

 監督は川尻善昭氏。エロとバイオレンスをクールに描いた傑作『妖獣都市』の監督が,さらなる進化を遂げていたことに深い感動を覚える。続編があるかどうかはわからないが,ハードボイルドを描ける監督は少ないだけに,ぜひとも作って欲しいものだ。

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