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ダロス

ダロス日本初のOVA(オリジナル・ビデオ・アニメーションの略、ビデオ販売を目的に作られたアニメのこと)である押井守監督作品『ダロス』を観賞。押井守のファンサイト 野良犬の塒 によると、押井は全4話のうち、第2話と第3話の脚本・絵コンテ・演出、そして第4話のアクションシーンと絵コンテを担当したそうだ。

率直な感想として、僕はこの頃の押井が好きだ。言わんとしていることが素直に表現されており、恐らく自分の中でも消化できていないであろう心の葛藤が台詞にもよく反映されている。ちなみに物語の基本構造は「権力と反権力」の二項対立で押井が長年扱い続けているテーマだ。犬がよく登場するのも押井作品っぽい。

僕がこの映画に対して、押井が素直だと思ったところは、権力者と革命家の間に主人公を配置し、どちらの立場にも理解を示しながら、しかしどちらか片側の勢力を選ぶという行為を拒み続ける姿勢だ。また、革命家のオルグ活動(労働運動や大衆運動の組織活動)によって労働者がゼネスト(ゼネラルストライキの略、労働者の全国的規模によるストライキのこと)を起こし、一瞬は革命家に同調して反乱のような状態になるも、結局はそれを放棄し自分達の生活に戻っていくというシーンは非常に冷静な視点だと思った。さらに、労働者に「俺たちの世代はお前たち(ここでは子どもの世代)とは違う。権力者に対して疑いの目を持つことはできない」というような台詞も独白させていた。うーむ。

「ダロス」というのは、開拓者(労働者)たちの神である。人間が人工的に作り出した神という設定などはオウム後の僕たちから見ればかなり強引に映る気がしないでもないが、同時期に公開された「幻魔大戦」や「風の谷のナウシカ」などに鑑みると、当時の雰囲気をよく表していると思う。