bemod

2004年08月17日

ロシアのユーモア

ロシアのユーモア川崎浹著『ロシアのユーモア ― 政治と生活を笑った三〇〇年 ―』(講談社選書メチエ)を拝読。ロシアではちょっとした政治的ジョークのことを「アネクドート」というらしい。そのアネクドートの歴史を追った一作。小林よしのりがかつて日本人について自虐史観なんて言葉を使ったことがあるが、この本の中に登場するロシア人はまさにその言葉にピッタリだ。いくつかを紹介する。

 スターリンはプーシキン記念碑の複数の計画案を検討していた。第一案は、プーシキンがバイロンを読んでいる、というものだった。
「これは歴史的には正しいが、しかし政治的には正しくない。党の総路線が示されていないのではないか?」
 第二案は、プーシキンがスターリンを読んでいる、というものだった。
「これは政治的には正しい、しかし歴史的には正しくない。プーシキンの時代には、わたし、同士スターリンはまだ本を書いていなかった」
 第三案が政治的にも歴史的のも正しいことが判明した。それはスターリンがプーシキンを読んでいる記念碑である。こうして記念碑が建てられ、開幕式で、みなが眺めると、スターリンがスターリンを読んでいた。

こんなのもある。

 あの世でキリストとマルクスが出会った。科学的共産主義の創設者はキリストにこう尋ねた。
「わたしの科学的な教義は一世紀半で霧散してしまったが、あなたの科学的な教義はなぜ二〇〇〇年近くも続いているのですか?」
「あなたの基本的な過ちは、自分の天国を示してしまったことにあるのです」

最後に、万国の労働者に団結を呼びかけたマルクスが復活し、第23回ソ連共産党大会(1966年)で演説を行うというアネクドートから。

 マルクスの新スローガン。
「万国の労働者諸君、私を許してください。」

うーむ。自虐的。

Posted by Syun Osawa at 23:01