bemod

2004年09月04日

わが哲学論争史

わが哲学論争史マルクス著『経済学・哲学草稿』(岩波文庫)の訳者としても知られる田中吉六氏の半生を描いた自伝。田中吉六氏とは大学の教授や研究員にはならず、日雇いの肉体労働で生活費を稼ぎながら研究を続けていた方。

どこでそんな話を耳にしたかは忘れてしまったけれど、機会があったので読むことにした。自伝といいながらも軽いエッセイなどではないため、半分くらいは唯物論研究、認識論と技術論、実践による主体性とその論争などが占めており、僕にはよくわからない部分が多い。知りたかったのは、彼の実生活の方だけだったので、その辺はサラサラと読み飛ばした。マルクス主義者に限ったことではないが、「経済」を研究している人が、こうも貧乏な現実が僕にはやっぱりよく飲み込めない。堀江モンや楽天の三木谷氏がマルクス主義者であるはずもなく、誰のための何のための研究かも僕にはよくわからない。

そういう部分は大学の先生が飽きるほど研究されているので、それはそれとしてやはり興味があるのは人生の方。僕は当初、田中氏は多くの大学や研究機関からの採用を拒否し、自ら日雇い労働の道に進んだと思っていた。本書を読んでみるとそうではなくて、大学に行っていなかった田中氏の学歴がそれを許さず、結果としてそういう道に進んだようである。こういう物語は後付けでピカピカに偽りの光を放つことが多いので、そういう意味では田中氏のこの自伝は、率直に自分の生活(愛の生活も含め)を描いており、僕のわかる範囲では好感を持てる部分が多かった。

田中氏も若い頃は自分の著作印税だけでご飯を食べていたが、それだけでは食べていけなくなりやむなく日雇いに出るようになるわけだ。でも実は大学の教授の本だって似たようなもので、生徒に糞高い値段で買わせているけれど、それで食べていける人は多くない。東浩紀は「サブカルなんかやっても媒体もないし金にはならない。現代思想は固定ファンがいる」と言っていたけれど、本当にそうだろうか? やっぱりぼくは彼なんかもアニメや漫画といったサブカルに「お金」の匂いを少なくとも感じているのだと思えてならない。話がそれた。

Posted by Syun Osawa at 21:30