bemod

2004年09月25日

GOTH −リストカット事件

GOTH乙一が気になって仕方がなくて、ようやく最初に読もうと思っていた本を読了することができた。『GOTH −リストカット事件』。長編なのかと思ったら、二人のキャラクターを主軸に据えた短編集だった。どの話が一番というのは言えないけれど、しいていうならば「土」が好き。ただし「土」はキャラ立ちが弱いので、そういう意味では最初の二作から順を追いながら二人の物語を楽しむのが一番最適な方法なのだと思う。

どアタマの話は高橋ツトムの絵が浮かんだまま消えなかった。あいかわらず徹底的に冷めている。そして冷めている自分たちの回復に本質があり、そこがせつなさとなって表出する。それが僕の中の乙一像だった。しかし乙一はあとがきでこう書いている。

 二話目の『リストカット事件』を書いたとき、知り合いのホームページの掲示板に、「せつなくない」「乙一のウリであるせつなさが感じられない」という感想があって憂鬱になりました。…(中略)…ところで、僕本人は、「せつない」というのをウリにしたいと思ったことはあまりありません。もちろん、本の中身が「せつない」のであれば、そういう売り方をしないと本が売れないわけですけど……。でもそういう売り方は、人の尊い部分を資本主義の汚い手で触れているような気がします。

読了後、僕と森野の物語の余韻に浸りながら本を閉じた。そのとき本の背に「角川書店」の文字を見つけ、あわてて目をそらした。「資本主義の汚い手」はこの作品をメディアミックスの毒牙にかけるだろうか。『ZOO』も機会があれば読んでみたい。

Posted by Syun Osawa at 14:40