bemod

2004年10月22日

わいせつコミック裁判

わいせつコミック裁判長岡義幸著『わいせつコミック裁判』を読了。争点はわいせつか、わいせつでないか。もしもビューティー・ヘア著『蜜月』がわいせつ物であったならばそれは以下の条文に違反するのだそうだ。

【第175条(わいせつ物頒布等)】
わいせつな文書、図画その他の物を頒布し、販売し、又は公然と陳列した者は、二年以下の懲役又は二百五十万円以下の罰金若しくは科料に処する。販売の目的でこれらの物を所持した者も、同様とする。

詳しい話は まとめサイト を読めばわかる。ポイントは二つ。「『蜜月』がわいせつ物なのかどうか」と「刑法で言うところの『わいせつ物』を特定した取り締まりは、そもそも憲法の定めるところの『表現の自由』に反するのではないか」ということ。僕は後者以外に本質があるとは思えない。

しかし現実的な争いは前者で展開されているため、裁判所で展開される検事と証人の「わいせつだと思いませんか?」「思いません」といったやりとりが実に滑稽に映る。「いやらしいこと。みだらなこと。また、そのさま。」という日本語の意味に照らせばそりゃ間違いなく猥褻だし、法が定める「いたずらに性欲を興奮・刺激させ、普通人の正常な羞恥心を害し、善良な性的道義観念に反すること。」という定義に照らせば別にわいせつではないということになる。それらを全部ひっくるめて、「わいせつ物」であることを被告に認めさせようとし、裁判所もわいせつのこれといった基準を示さないままに有罪にしている。実に不思議な話だ。

ちなみにこの本は道出版から発売されている。なぜ道出版なのかと不思議に思っていたが、道出版という会社は『蜜月』の販売元の松文館の社長が作った出版社だそうな(妻が代表取締役)。詳細は不明だが自称右翼に殺害された石井紘基氏の本を出版するにあたって、エロ漫画の出版社からじゃマズイだろうということで作られた出版社らしい。この事件の発端(息子が『蜜月』を読んでいるのを見つけた父親が、平沢勝栄の事務所に投書し、それが警視庁に流れた)を考えると、何とも不思議な脈だと思う。

Posted by Syun Osawa at 23:43