bemod

2004年12月08日

赤目

白土三平/小学館文庫

赤目パンチ効きまくりの劇画時代劇。横暴な領主に妻を殺された農民が復讐するというシンプルな物語。骨格はシンプルなんだけど、その肉付きがもの凄い。妻を殺された松造が忍者部落に迷い込み、そこで修行を始めるっていう展開だったら、普通そこで一人前の忍者になって領主を倒すって話でしょ。そうじゃないんだな。なんと赤目教なるウサギを信仰する新興宗教を布教させて、ウサギの数を増やし、食物連鎖を利用して復讐するというというトンデモな展開。しかも壮絶なラスト。

最初の領主の圧政のシーンはかなり執拗に描いている。しかもそこにナチスや関東軍が実際にやったとされる野蛮な行為をトレースして、そこに一文を添えている。また、忍者部落に迷い込んだ松造は漫画のような展開で一人前の忍者になることは許されず、農民はしょせん農民であるという現実をつきつけられる。これぞリアリズム! そうした現実を克明に描きだしながらも、ストーリーはとんでもない方向へ走っていく。

クライマックスの展開はトンデモの世界だけど、実話をもとにしていることがこれまた凄い。丁寧に実話を重ね合わせながら、それらの上を行くトンデモなエンターテイメント作品を作り上げる白土三平の力を改めて見せ付けられた気がした。

Posted by Syun Osawa at 01:04