bemod

2004年12月09日

大尉の娘

プーシキン/新潮社

大尉の娘これ読んだのいつ以来だろう。学生のときだったことは間違いないんだけど、ほとんど記憶がない。そしてこういう本を読み返すときは、きまって100円以下の値段で手に入れたときというのも何とも悲しい。本書はプガチョフの反乱をベースにした大河ロマンで、一応プーシキンの代表作の一つとされている。

そもそもプガチョフの反乱って何や? っていうんで、春のブックフェアにて200円で購入した山川出版社の社会資料集を開くと、プガチョフが出てきた。本書に登場するプガチョフは野蛮で『ノートルダムの鐘』の主人公あたりを連想させるが、意外にしゃんとしてる。1773年にエカテリーナ2世の時代に農奴解放を求めてコサックが反乱を起こしたと書いてある。資料集的には同じコサックの首領が起こしたステンカ・ラージンの反乱の方が、素晴らしい絵画が残っているためインパクトは強い。時代的にはアメリカ独立宣言の3年前というのが一番捉えやすいかも。プーシキンがこの本を上梓したのは1836年9月19日だから、プガチョフの反乱の63年後にこの本が出たとことになる。日本はもちろん江戸時代。

内容的には非常に辛気臭い。要領の悪い男がもうなんか誠実にどーのこーのとかやってるわけですな。時代が違うといってしまえばそれまでだけど、敵との距離感がこの感覚でまかりとおっているのはもはや歴史小説でなければありえない。遠山の金さん的なキャラクターの登場のさせ方をプガチョフとエカテリーナ2世にそれぞれ使っていたり、同じ場所を行ったりきたりして結構マンネリ。

でもって、主人公が大尉の娘を本当に愛しているのか愛していないのかがイマイチわからないまま、ダラダラと時代の波とともに物語が進む。最終的にはどうやら愛していたんだねってことはわかるんだけど、いやいやいや。淡白というか、何というか。一番いい味を出していたのはサヴェーリイチ。こーいう人いる。

Posted by Syun Osawa at 01:34