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2004年12月20日

江戸漫画本の世界

湯本豪一/日外アソシエーツ

江戸漫画本の世界自分で漫画を描いていても、漫画について知らないことは多い。漫画の起源が鳥羽僧正の「鳥獣戯画」らしいという事とか、江戸時代に印刷技術の発達によって庶民の間で「漫画的な本」が流行ったらしい事くらいは以前から知っていた。でも僕は、どこかで戦後の漫画史はそうした江戸漫画的影響よりも、アメリカから手塚治虫へと繋がる線上にあるという先輩達の言葉を鵜呑みにしてる部分があった。いわゆる手塚治虫の『新宝島』オープニングシーン。車が画面の奥から近づいてくるコマ割りがアメリカ映画を連想させるというアレだ。

でもこの本を眺めると、やはりそれだけで語りつくせないという事がわかる。線画で人物や風景を動的に表すという技法の追求は、江戸時代に積極的に行なわれていたようだ。特にキャラクターの造形は、僕が思っていた以上にバラエティに富んでおり、自由な表現で各々が創作に取り組んでいる。今は漫画という言葉に集約されているけれども、江戸時代には鳥羽絵、妖怪絵、略画、疎画、狂画、漫画、文字絵、遊び絵、戯画、画譜、草画など実にたくさんの種類の漫画的な種類が存在した。水木しげるや京極夏彦の世界というのはその中の妖怪絵の系譜に位置するのだろう。

そんな線画技法の中で僕が一番気に入ったのは鳥羽絵。

鳥羽絵

可愛く大きな顔に細長い手と足がついている。これが鳥羽絵の特徴。作家性というよりはご当地性というべきか(ラーメンみたい)。躍動感がありつつも、筆の流れに任せた躍動感だけではなく、服の模様などディティールの部分を細部に描き込んである。凄いぞ江戸漫画! この本を読んで、少なくとも黒鉄ヒロシのやる気のない絵が、こういった系譜のトップランナーではないことだけはわかった。もう少し勉強してみたい。とりあえずは『ジャパン・ポンチ』を探しにいくことにしよう。

Posted by Syun Osawa at 01:30