bemod

2005年02月13日

パークライフ

吉田修一/文芸春秋/書籍

パークライフ仕事の関係で昔よく日比谷公園で昼飯を食べていた。その当時の雰囲気を浮かべながら読んでしまったのは、ちょっと反則かも。爽やかな作品。ただし不思議ちゃん(死語)というとってもベタな登場人物が物語をグイグイ引っ張る微妙な展開なので、人工的であり都会的であることを前提とした爽やかな作品という感じ。ボーッとしているサラリーマンの視線には共感できた。

物語の中盤に登場する風船おじさんが空に上げた風船の視線は、東京という街をファーッと立体的に映し出すようでドキドキする。そこで実際の日比谷公園を眺めてみると、風船からは こんな感じの風景 が視界に入るようだ。「どの辺が心?」とは思わないように。地図を見ると公園の周りにあるのは空疎なビル街で、東京の中でも最も人間味のない場所だいうことがわかる。もし僕がこの高さから日比谷公園を眺めたならば、間違いなく皇居の荘厳さの方に目を奪われていただろう。都会で暮らす人たちの曖昧な心の動きが表現されていて、日比谷公園さえ知らなければ僕も爽やかに読み、特に記憶に残らず本を閉じていたと思う。

Posted by Syun Osawa at 22:24