bemod

2005年03月28日

人形峠大殺戮

さいとう・たかを/リイド社/漫画

人形峠大殺戮さいとう・たかをの古い短編集。リイド社が出している劇画座招待席というシリーズの中の1冊。なんとこのシリーズ全70巻も出ているそうな。全部読めるかなぁ。

「人形峠大殺戮」
タイトルからしてそそられる。そして導入の言葉もいい。こんな感じ。

おまえが“核”をもつなら、殺戮は意のままだろう… だが、お前の持つ“核”もおれたちの魂まで焼き尽くすことはできない―

人形峠にまつわるエピソード、原子力発電所と爆弾、エリートとアナーキスト、そして男と女。どれもいいなぁ。新聞記者がクーデターを狙うアナーキスト集団に入り、天才物理学者の技術を盗もうとするというストーリーを軸にしつつ、その裏側で新聞記者と天才物理学者が恋のバトルを繰り広げる。うーむ、物語が爆発してますねぇ。アナーキスト集団がみんな旧時代の軍服を着ていて、リーダー格の男が強面のスキンヘッドのオヤジだったりするのがなんとも妙です。

「尻むけの宿」
これもタイトルが素晴らしい。寂れた温泉宿を舞台にした浪人同士の戦い。僕もやりがちな「とりあえず戦ってる」という戦いではない。なぜ戦うのか? この問いをつねに自分自身に突きつけている。極道者の兄貴と官職に就く弟という王道の人間関係をここまでしっかりやれるなんて羨ましいです。

「悲願剣」
これもすごい(こればっか)。恋人の敵に処女を奪われた女が、最後に恋人の前で自殺するシーンは圧巻。それまでの複線とあいまってフェードアウトする雪景色の悲恋さが、まさに王道の悲劇という感じ。こういうのを僕もやりたくて『小池一夫のキャラクター原論』(全3巻)を買ったはずなのに、少しも近づけず。はぁ。

「突き破る七人」
どちらかというとバカ漫画の部類に入るだろうか。『七人の侍』を珍道中に変えたらこうなったっていう話なんだけど、後半が妙にバタ臭くて最後は『うる星やつら』並みにメチャメチャになる。ただし、最後だけちゃんと漢(おとこ)を演出して終わるところがさいとう流かな。

Posted by Syun Osawa at 01:09