bemod

2005年06月09日

さよならにっぽん

大友克洋/双葉社/漫画

さよならにっぽん大友克洋の短編集。僕の場合、大友克洋直撃世代ではないので、『ショートピース』も『童夢』も『彼女の想いで…』も、当時連載が続いていた『AKIRA』の影響下で読んだ。しかもそれらの本はすべて古本屋で購入、という時代。今回久々に購入した『さよならにっぽん』にしたって古本だし、大友克洋の漫画に対する認識は今も昔も僕の中ではあまり変わるところがない(そーいや『ZeD』も『サルタン防衛隊』も古本だったなぁ…)。

本書は、売れない3人組のバンドを中心とした物語と、ニューヨークに道場を開いた冴えない空手家の物語が収録されている。何てことはない、冴えない日常の風景だ。これといった主義主張があるわけでもないし、派手な大立ち回りがあるわけでもない。全共闘の熱気が終わり、しかもバブル前。そのなんとも言えないしみじみした雰囲気がこの漫画には溢れている。

一方で、妙なポップさもある。背景にさりげなく描かれている看板とか、バンドメンバーが語るミュージシャンの名前とか、そういうディティール的な部分に個人的な主張が込められている。「ダサかっこいい」ってところのポップ感。さらに「しみじみ」をネガではなくポジに捉えていて、しんみりし過ぎないライトな風情が各コマを立体的に覆っている。

例えばそれは浦沢直樹やハロルド作石(この二人よりは視点が冷めてるけど)なんかにも繋がるような風情ではないかな? 妙に白くって、のほほんとして、アメリカを引きずってる日常の描写が、バブル真っ只中の中学生だった僕には、ジャンプ熱を冷ます良い冷却材になっていたのかもしれない。浦沢直樹の短編集も僕はそういうところが好きで読んでたし。おそらく10年後に読んでもこの白々とした読後感は同じだと思う。

Posted by Syun Osawa at 19:51