bemod

2005年07月09日

てんで性悪キューピッド(全4巻)

冨樫義博/集英社/漫画

てんで性悪キューピッド『HUNTER×HUNTER』『幽☆遊☆白書』の冨樫義博によるお色気コメディ。ブレイク前夜という意味では井上雄彦の『カメレオンジェイル』とも立ち位置が似ている気がする(内容は全然違うけど)。

80年代後半の漫画だし、安易に考えて『うる星やつら』のラムちゃん(鬼)がまりあ(悪魔)に変えて…という流れで企画されたのかなとかパッと思い浮かぶが、実はこの二つの作品では主人公のキャラクターが決定的に異なる。あたるはスケベ、竜次はスケベじゃない。『うる星やつら』の設定は今あまり見かけないのに対し、『てんで性悪キューピット』の設定はモロ今につながっている。よーするに純情な男の子が可愛い女の子に巻き込まれウハウハする話(しかも女の子はわりと積極的)。

巻き込まれ型ストーリーの撒き餌として家族の設定も頑張っている。個性豊かな4姉妹とヤクザの親父(母は無し)で全員の立場が竜次より上という主人公のための贅沢仕様だ。このあたりも今に繋がる潮流みたいなものを感じる。ただし、4姉妹は突飛な設定ほどには物語に参加してない。

いわゆる90年型「萌えマンガ」の前哨戦ともとれるこのマンガ、先月買った『シリウス』創刊号が読め切れずに挫折したおっさんの僕にもそれなりに読めた。ストーリーもベタに進んでいるように見えて、ラストへの複線が張ってあったりで引き込まれるし、何よりいわゆる「女の子」を感じさせるホワーッとしたシーン(「萌え〜」みたいなシーン?)で引かされることもなく、シンプルな漫画の面白さで話が構成されていたからだろう。一見ありがちで、企画先行で作られてるような設定と物語なんだけど、おっさんになった今でもわりと気持ちよく読めるところは、冨樫義博の冨樫義博たる所以なんだろうか。

もっと、冨樫義博たる所以。たった4巻のマンガにもかかわらず、絵柄がどんどん変わってゆくこと。徐々に上手くなっていくというわけではない。桂和正のようなリアルなアップがあったかと思うと、次のページでは『くりぃむれもん』みたいな絵柄になってたりする。タッチが奔放に変わっていくいい加減な感じとかは僕は結構好きなんだけどねぇ…。ちなみにこの頃の彼はまだ収入はそれなりのはずで、時間とお金に不自由していた事を書いている下のマンガをふまえて読むと、なにか感慨深いものもあるのかもしれない。ないか。

『てんで性悪キューピッド』より

Posted by Syun Osawa at 11:29