bemod

2005年09月16日

四年生

木尾士目/講談社/漫画

四年生この作品が『アフタヌーン』に連載された98年頃は、僕がちょうどこの雑誌から離れ始めていた頃と重なる。作品の中で延々と続く恋人同士の会話劇を、当時どんな風に読んでいたかは覚えていないが、今こうして読み返してみようと思うくらいに心に何か留まるものがあった事だけは確からしい。

本作では、大学4年生の人間模様(恋人や友達)が淡々と描写されており、この時期を経験したことのある人なら作品に感情移入することは難しくない。突然「将来」を突きつけられて、苛立ったり、不安になったりする事は誰もが経験したことだと思うからだ。ただし、ここで感情移入しているのは、物語に登場する人物達にではなく、読者が思い出すあの頃の自分達に対してだろう。

私小説ならぬ私漫画的な振る舞いを見せるこの漫画に対して、僕が感じることは「つまらない」ということ。恋人同士の会話のつまらなさ、SEXしてる時の会話のつまらなさ、友達との会話のつまらなさ。そして、これから予想される人生(大学を出て、就職し、そのまま結婚、死ぬまで夫婦)のつまらなさ。

私小説ならば、そのつまらなさが作家本人に安易に向ってしまうのだが、そうではない。作品の中で提示されるつまらなさは、作品のつまらなさとも違うし、作家がつまらない奴だという意味でもない。作者はきっと、僕らが何となく「つまらない」と感じている日常に対して、考えて、考えて、結論が出ない様を独白しているのだと思う。現在連載中の「げんしけん」はどんな漫画なのだろうか? 完結したらぜひ読んでみたい。

Posted by Syun Osawa at 00:44