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2005年12月16日

トムとジェリー アカデミー・コレクション

監督:ウィリアム・ハンナ(1940-58年)、監督:ジョセフ・バーベラ(1940-58年)、ジーン・ダイチ(1960-62年)、チャック・ジョーンズ(1963-67年)/オムニバス作品/アメリカ/アニメ

トムとジェリー アカデミー・コレクショントムとジェリーって何気に凄い。動きがダイナミックでアニメーションの根源的なものを教えてくれる。そーいや少し前に古本屋で買った『SFアニメファンタジー』(1978年/新書館)の特集「世界アニメ映画ベストワン」の中で、森卓也さんもTOP5に選んでた(ただし1941−1956年のTVシリーズ)。

本作品は、そんな優れた作品群の中からアカデミー賞を受賞したりノミネートされた作品だけを集めたオムニバス。だからアニメーションのクオリティもさることながら、物語の出来もいいんだと思う。シリーズ全体を見ているわけではないので、何とも言えませんが…。

トムとジェリーは某アニメ上映会でよく見ているとはいえ、一度にこれだけの作品を見るのは初めて。通してみると、意外にも作品によって毛色が違うことに気づく。トムとジェリーの二人の関係に絞ったアニメーションもあれば、キャラクター性だけが先行して劇中劇のようなスタイルになったもの、新キャラが毎度登場するものなど様々。見た目で言うと「上には上がある」という作品などは、トムもジェリーも顔が全然違うし、個々のキャラクターの動きが洗練されていなくて驚いた。『キネマ旬報』増刊4・28(1948年/キネマ旬報社)を見ると、どうやら1940年にこの作品で初めてアカデミー賞にノミネートされたみたい。

アニメーションの技法に目をやると、こちらはディズニーアニメと似ていて、キャラクターの移動域は、上下、左右に長く、前後は10メートルくらい。いわゆる劇場型のカメラワーク。暇人なのでコマ送りで見てみると、わりとパターン化された動きという感じもした。ビックリした時の眼の飛び出すアクションなんかも含め、キャラクター性を動きで浮かび上がらせることに努力しているのが見える。あとコマ数の多さは尋常じゃない。見ているだけで気持ち悪くなります。よくもまぁこんなに描くもんだ。ディズニーに追いつけ、追い越せで頑張っていたのでしょうね。

トムとジェリーは子供向けのアニメのわりに残酷なシーンが多く、トムはよくジェリーに尻尾を切られるし、トムはトムでジェリーに向って鉄砲撃ちまくる。『ワルツの王様』という作品では、なんとトムは主人にギロチンをかけられて殺されて終わる。怪我しても、殺されても、次のシーンでは何もなかったように元気に復活してる。

テレビではたまに「今の子供はバーチャルリアリティーと現実世界を混同していて、スイッチを切ればうんぬんかんぬん」みたいなアホなことを言う人がいますが、トムとジェリーではそれが芸風になってる。しかもそれが1930年代のアニメとして消費されているわけです。バーチャルリアリティーというよりは、こういうアメリカ文化が日本に流入した結果と見るのが正解かもしらん。

【アカデミー賞受賞作品】
1.勝利は我に(The Yankee Doodle Mouse)(劇場公開時:星条旗よ永遠にの巻)
2.ネズミとり必勝法(Mouse Trouble)(劇場公開時:ねずみ取り虎の巻)
3.ただいまお昼寝中(Quiet Please)
4.ピアノ・コンサート(The Cat Concerto)(劇場公開時:猫の演奏会)
5.台所戦争(The Little Orphan)(劇場公開時:食いしん坊の仔鼠)
6.パーティ荒し(The Two Mousketers)(劇場公開時:鼠の二銃士)
7.ワルツの王様(Johann Mouse)(劇場公開時:猫の宮廷音楽会)

【アカデミー賞ノミネート作品】
8.上には上がある(Puss Gets The Boot)
9.メリー・クリスマス(The Night Before Christmas)(劇場公開時:トムとジェリーのクリスマスイブ)
10.あべこべ物語(Dr.Jekyll And Mr.Mouse)(劇場公開時:鼠のハイド氏)
11.いたずらきつつき(hatch up your troubles)
12.ごきげんないとこ(Jerry's Cousin)(劇場公開時:チュー太武勇伝)
13.武士道はつらい(Touche、Pussy Cat!)(劇場公開時:剣豪ジェリー)

<特典>収録時間:(約8分)
Worry Song「錨を上げて」より

Posted by Syun Osawa at 23:27