bemod

2005年12月23日

長靴をはいた猫

監督:矢吹公郎/1969年/日本/アニメ

長靴をはいた猫作画監督に森康二、原画に大塚康生さん、宮崎駿さんのクレジットもある。大塚康生さんが アニメージュ文庫版の「あとがきにかえて」 に書かれているように、ディズニーっぽさが至る所に見え隠れしてる。ペロという可愛らしいネコ剣士を筆頭に、ライバルの悪ネコ三銃士、ネズミ軍団など、豊かな表情と動きでキャラクターの存在価値がググッと高められていて、この頃のアニメ業界には今とはちょっとちがう視線の先があったのかなと思う。

スタッフの豪華な顔ぶれとは裏腹に内容的にはツッコミどころ満載。というのも、この物語の最初の転び方が、ローザ姫が「世界一の金持ちを婿にします」と募集し、その募集に魔王が応募したことから始まっているからだ。ローザ姫は魔王を見るなり「死んでも嫌!」と無碍(むげ)な断り方をする。怒った魔王は三日後の晩に強制的にローザ姫を嫁に貰うことを宣言する。この時点で妙な感じが漂ってますね(どっちもどっちじゃん…)。

主人公は百姓の三男、ピエール。金に汚い二人の兄に追い出され宿無しにされる。友人のペロ(猫)がその不遇を救うために、ちょうど婿を募集していたローザ姫の逆玉にするための工作を始める(これもセコい…)。

この展開もかなり妙なんですけど、僕が一番気になったのは、この国の王族がやたら「貧乏臭い」こと。基本的に城の中でも王様と姫しか出てこない。外出する際にも、付き人はたった3人。だから世界一の金持ちを婿にしたいと考えると筋は通りますがw

ところが、魔王との対決の場面で、ローザ姫は「お金はいらない、ピエールと一緒になりたい」と言い始める。…いやいやいやいや。魔王もダメだけど、ピエールも完全にダメだろ。だって彼、最初はペロと組んで自分が金持ちの息子であるかのように振舞ってた嘘つき男だよ? しかも逆玉狙い(さらに貧乏)。僕がお父さんなら認めんぞ絶対。

…子どものためのマンガ映画に、いい歳したおっさんが茶々入れするほど気持ち悪いことはないので、このへんで。

そういう不思議な物語の展開はさておき、背景画は暖かくて好きです。夜の描き方はやっぱり青色を使った偽の闇がしっくりくる。あと動きも。癖がないというのか、カメラワークなんかも絡めた過剰な演出もなく、シンプルに空間を動きだけで描き出している感じがする。

Posted by Syun Osawa at 23:22