bemod

2006年03月17日

英・雄・時・代 日本語版

監督:ヨーゼフ・ギーメシュ/1982年/フランス/アニメ

英・雄・時・代けったいなアニメ。

アレクサンドル・ペドロフも真っ青の油絵アニメ。しかも印象派に片足を突っ込んだような光の表現美しい色調で、色の量、描きこみともに根性が入ってる。原画マンより着色の人が大変そう。中でも合戦のシーンと主人公が馬を駆って森を疾走するシーンの表現は圧巻で、そこについやされたであろう膨大なエネルギーにただただ感服するばかり。画面の演出効果(エフェクト)も面白く、動きに制約のある画面を動かすための工夫が随所に見られた。機械的に複雑というよりは動きと色調を複雑に変化させることでスピード感を出しているものなどがあったりと、いろいろ学ぶところが多かった。

話の方は不思議な展開を見せる。

ストーリーは農奴の若者が騎士(勇者)になりたくて悶々とした日々を過ごしている。ある日、村で人殺しを働いてしまい、それをきっかけに城下町へ。城下町で荒くれ者の剣豪を倒して騎士になる(いつの間にそんな腕前に?)。友人に身代わりを頼まれて出た闘技大会で優勝し、副賞で授かった娘に恋をする。

そうこうしているうちに、かつて倒した荒くれ者の剣豪の娘に捕らえられる。そこで凄惨な拷問を受けるも、なぜか鎖を素手で破り、牢屋を素手で打ち破り、拷問を受けたことに対する復讐もしないままに城下町へ戻っていく(いいのか?)。町に戻ると、前に恋した娘は友人の妻になっていた(身代わりで出たんだから仕方ない)。怒った主人公はその友人を殺し、その蛮行の結果、愛する娘も失ってしまった(何だこの展開はw)。

虚しい戦いが繰り返され思い悩む日々。そうこうしているうちに時代は移り変わり、兵力は剣から大砲へ。大衆劇で騎士がちゃかされたのにブチ切れし、大道芸人たちを殺しまくる。もちろん捕まって死ぬわけですな。そしてその最後の言葉が…

「神よ、ゆるしたまえ」

いやいやいやいや…許さないだろ。

気合入りまくりの画面とは裏腹に、物語は心でっかちで自分勝手な主人公の独白によって淡々と進んでいく。「騎士道」について考える主人公の思いは、日本訳すると『葉隠』の山本常朝のボヤキにもとれてなかなか面白かった。騎士道と武士道には裏側にそこはかとない悲しみが隠れていて、そこがまた悲劇的で惹かれたりもするんだけど…。

Posted by Syun Osawa at 01:07