bemod

2006年04月23日

ポール・グリモー短編傑作集

監督:ポール・グリモー/1988年/フランス/アニメ

ポール・グリモー短編傑作集自分で描いたキャラクターと戯れとる。

やりてー!

アニメになったポール・グリモーが小屋の中に入ると実写になる。その部屋で実写の彼がキャラクターと一緒に自分の作った短編集を見ていくという作品。

単純思考で見ると、初期の作品はディズニーの影がチラホラ見える。それは例えば、「かかし」(1946年)に登場するかかしの、関節が明確じゃないグニャグニャの手足だったり、ウッドペッカーみたいな鳥の鳴き声が出てきたり(これはディズニーじゃないか)、「魔法のフルート」(1946年)で笛の苗色に合わせて踊りだすミュージカル仕立ての展開だったり、「泥棒巡査中」の警官と泥棒の追いかけあいであったり。

1970年に作られた「ダイヤモンド」あたりになるとその雰囲気に少し変化が見られ、内容もやや重めになる。主人公の紳士がダイヤモンドを神と崇める先住民の住む島へ行き、武器を片手にダイヤモンドを奪うが、飛行機が故障して砂漠の真ん中に落ちてしまうという話。この話の展開もさることながら、そのあと実写の映像に戻ったとき、この映像を見ていたキャラクターがグリモーに向って「僕、この人好きじゃない」と言い、グリモーも「ああ、悪い奴だ」と感想を述べるところは凄かった。

そのほかにも、声優の女性とグリモーがセルを眺めているシーンが魅力的。グリモーが「(このキャラクターはここで)何て言ったっけ?」と女性に尋ねると、カメラがセルにズームアップし、キャラクターが動き出す。これなんて誰もがあこがれるシーンではないかと思う。

実写の映像の中でキャラクターとグリモーは同列で、それこそキャラクターが演劇に出演するような形で短編を鑑賞する。この作品集は作品の寄せ集めではなかった。内容のほうもさらに重くなっていて「音楽狂の犬」(1973年)では奏でる音が世界を破壊するバイオリンが登場し、それを悪用する人間たち。そのバイオリンを犬が奪い…という展開を見せる。彼の代表作「小さな兵士」を見た後、それぞれのキャラクターたちがフィルムの入れ物の中へ戻っていく。グリモーも身支度をし、フィルム室から出て行く。外に出た彼はアニメの身体になっている。素敵過ぎる。

Posted by Syun Osawa at 23:16