bemod

2006年06月19日

散るぞ悲しき

梯久美子/2005年/新潮社/四六

散るぞ悲しきドスーン。

あまりに凄すぎて自分に置き換え読んだりとかはちょっと無理。悲しさとか疑問とかやりきれなさとか、いろんな気持ちが入り混じっていてどう感想を書いていいかもわからない感じ。まさに…

ドスーン。

…って感じ。

アメリカへの留学、家族集まっての食事はにぎやかなことをよしとする感性、家族へ届けられた手紙の多さ、妻への愛。今でもなかなか見ないような超合理的な考え方を持ったパパが玉砕しなければならない時代とは何だったんだろうか?

負けることが確実な南島では、やけくそのバンザイ突撃によって玉砕するのが常とされていた。しかし硫黄島総司令官の栗林忠道はそれを許さなかった。

潔い死を死ぬのではなく、もっとも苦しい生を生きよ

どうやっても勝てない、どうやっても生きて帰れない。それが確定しているのにもかかわらず、栗林は諦めること(バンザイ突撃)を許さなかった。この意志の強さに胸がつまる。

本書のタイトルにもなっている辞世の歌…

国の為重きつとめを果たし得で 矢弾尽き果て散るぞ悲しき

栗林はこの歌を大本営への決別電報の最後に記した。「悲しき」がこの戦闘の意味を物語っている。しかし大本営は「語感が戦闘指揮官に相応しくない」として、「散るぞ悲しき」を「散るぞ口惜し」へ変更した。

渡辺謙が主演し、クリント・イーストウッドが監督を務める『硫黄島からの手紙』は、この本が元ネタなんだろうか?

Posted by Syun Osawa at 00:30