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2006年10月27日

かみちゅ!(全16話)

監督:舛成孝二/2006年/日本/アニメ

かみちゅ!世代的には僕より上の世代の舞台設定なんだけど、ズガンときてしまった。心のそこからアニメって素晴らしいと言うよ!

声優初挑戦のボンボンブランコ・MAKOの声がゆりえのキャラを引き出している。アイドルが声優をやるという不届きな流れの中ではスマッシュヒットなのではないか(他をあまり見てないので何とも言えないけど…)。

ようするにブリッコか? 僕のように、モテないどころか、女性とまともに話をすることもままならないような男が好きになるであろうイメージとしての女の子が見事に表現されているのだ。

尾道に背景も素晴らしいし、動きも美麗。そして何より話が面白い。だからといってくだらなさの競争になっていないし、下ネタもない。各話のタイトルが80年代アイドルの曲に由来しているとはいえ、佐藤大さんの作品のような洒落た感じもない。おっさんのアニメオタクが喜ぶような、シンプルで大切なものがたくさん詰まっているアニメだった。

以下感想(批評じゃないよ、ただのメモ)。読み返してみると、どんどんMAKOにハマっていく自分を発見できる。今でもアニメは夢中で見てしまうんだよなぁ…。おっさんなのに。

第01話 青春のいじわる

中学生で神様。なのに大好きな人に告白したことはおろか、名前すら覚えられてない。でもめげない。神作画。

第02話 神様お願い

地元の神様が逃げ出す。それを連れ戻す話。あいかわらず動きが凄い。「千と千尋の神隠し」の美少女バージョンというところ。ブリッコ具合が鼻につくが、かなり雰囲気ある。

第03話 そんなつもりじゃなかったのに

貧乏神が猫(たま)に憑依する話。憑依するという概念があるのに、主人公は神様という一単体なのだろうか? 今回の作画は一休みという感じ。不思議な展開。家に貧乏神が住み着き、そこからいろいろなことが起こるというのは面白い。コメンタリーにMAKOが登場。ボンボンブランコの娘だった。

第04話 地球の危機

火星人の話。「宇宙戦争」を元ネタにした火星人とか中曽根総理大臣とか牛歩戦術とか。内容はシンプル。世代的に楽しめる人にはとても楽しい仕上がりになっている。20代後半から40代前半のアニメオタ用。

第05話 ひとりぼっちは嫌い

神様が風邪を引いたときの話。中学生のときに風邪を引いて昼間寝ているときの空気感がよく出ている。この時代をノスタルジーで描いたという意味で稀有な作品なのかも。主人公は相変わらずロリ声全開。

第06話 小さな決心

テストの結果は最悪。後輩の女の子が好きな男子に接近。一緒に部活に入る。ベタな展開ながらかなり可愛らしい展開。名前を少し覚えてもらって「だいたいあってますから」の台詞とか、MAKOの非常識なくらいの棒読みの萌え台詞が効いてる。

第07話 太陽の恋人たち

ノスタアルジーから更なるノスタルジーへ。海の家の神様というトンデモなところから、両親の若い頃へ。お父さんが町の写真を撮り続けている過去が明らかになって何ともいい気分になった。

第08話 野生時代

くだらねー。くだらなすぎて感動。猫たちの物語。アクションシーンが凄い事になっている。アニメーターがのびのびやってる感じ。動きも凄いし、妙に社会性もあるし、男と女の関係もあるし。行って来いの物語もあるし。DVDオリジナルの話らしい。どうりで作画が素敵なわけだ。

第09話 時の河を越えて

「戦争画」関連でも貴重な回となった。美少女作品で丁寧に大和を描いている。もちろん『男達の大和』などのブームに乗ったものであろうが、モーニング娘を自衛隊入隊のポスターに登場させるような匂い。それをすぐに戦争うんぬんに捉えるのは節足。マニアがいるというのがほんとのところでしょう。内容的にはわりと普通。第04話との兼ね合いが面白い。コメンタリーでそのことについて触れていて、思想的ないとは全くなかったとのこと。4話が左で9話が右という不毛な感じが面白い。

第10話 君に決定

ゆりえが生徒会長に立候補する話。「私って人望ないから」がツボ。あとは、応援演説のところで感動させるところが、『じゃりんこチエ』でテツが結婚式でやったスピーチくらい感動した。

第11話 恋は行方不明

ビデオで挿入された話。JR西日本の電車(オレンジと緑)が懐かしい感じ。ちょっと絵柄が変わっているような感じがする。白っぽいし。あと、背景を見てみると雲なんかもサラッと描いている。でも上手いんだな。主張しすぎず、風景としても様になってるギリギリのライン。中学生の駆け落ちネタで、原田知世似の映画が出てきたり、ケチャップが口についてたり、そのへんのところが細かくて可愛い。わかる人には凄く楽しめる内容。野中藍がコメンタリーに登場。適当なヤツだな。

第12話 ふしぎなぼうけん

12月、出雲神社が神様が集まるという事でゆりえが転校する。転校した場所でみんな神様扱いするので、なかなか友達ができないという話。『いまを生きる』のようなラストとかも、恥ずかしげもなくやってるので、そういうのも含めていい。シナリオがシンプルでいいですな。

第13話 やりたい放題

クリスマスの話。ゆりえとけんじの距離感がちょっと縮まった感じ。神仏とキリストみたいなところを扱いながら、恋愛パートで二人の関係が深まっていくところが良かった。

第14話 夢色のメッセージ

正月の本当に何もない一日。これはこれで『かみちゅ』らしい。ボケーッとした1月4日くらいの一日の様子、中学生にとっての一日の長さみたいなものがよく表現されている。コタツにいるゆりえの描写がとても生々しい。

第15話 ちいさな一歩で

バレンタインデーの話。ゆりえがいよいよ告白。みんながゆりえの告白に協力するくだりはムズがゆすぎるくらいだけど、その後、それが成就されるところでシンプルな感動がある。二人で空を飛ぶところまで昇華できるところがこのアニメのユーモラスなところだろう。

第16話 ほらね、春が来た

終わったー! 最後の最後までどーでもいい事に時間を使っていく物語が展開された。人間の心の豊かさはいかにどーでもいい事に時間を割けるかにあると考えていることもあって(今のところ)、それを真っ直ぐに描いた『かみちゅ』シリーズは楽しかった。大掃除、中学生の恋人同士の会話、女の子同士の会話。そして最後の街の情景。素晴らしい。身体をいちいち動かしながら喋るところとか、動きのデフォルメ感がブリッコを強調させていて、アニメらしさがすこぶるよく表現されていた作品だったのではないだろうか。

Posted by Syun Osawa at 00:25