bemod

2007年02月06日

路地

三木卓/1997年/講談社/四六

路地鎌倉に暮らす普通の人々の人間模様。

それぞれの物語に登場する人間が控えめに重なり合うのがいい。古書店の店主の物語と、その古書店に憎しみを抱く青年の物語だけは、直接的に表裏一体のストーリーを描いてはいるが、どちらか一方が悪いというわけでもない。どちらもちょっとずるくて、わがままで、そこが共感できる。普通の人たちが普通に暮らしていくなかで、立場の違いから憎しみあったり、また立場が違うからこそ愛し合えたりする。その微妙な温度差から生まれる様々な感情が上手く描かれていて、読み終えたときに、小説を読んだなぁという満足感があった。

一方で、登場人物がみんな若干ダウナー系で、どうしても自分自身と重ねてしまう。真面目に生きるのも、不真面目に生きるのも難しく、「しょうがねぇなぁ」と苦笑いするのだ(だけどDon't look Back in angerと続くのが90年代だったような気もするし)。

鬱系の小説というわけではないので、トーンは控えめなこの手の小説が僕の趣向には結構あってるのかもしれないなぁ。

Posted by Syun Osawa at 22:26