bemod

2007年04月10日

幕末機関説いろはにほへと(全26話)

監督:高橋良輔/2006−2007年/日本/アニメ

いろはにほへと数年前には考えもしなかったネットでのアニメ視聴が、今では当たり前のものになっている。

テレビシリーズだったりOVAの再放送をネットで見ることができるのは大変便利だ。そしてついに、ネット発のオリジナルアニメまで登場するようになった。完全なオリジナル作品をシリーズを通して見るという意味で、『いろはにほへと』は僕にとって初めての体験となった。

ただし、回が進むにつれてなぜか僕のテンションは下がっていった。きっと剣客商売的なエンターテイメントを期待していたからだろう。それは僕の勝手な思い込みであり、つくったほうには何の責任もない。ただ、第一話がそのような思わせぶりなつくりだったし、期待感をあおっていただけに、冗長なその後の展開には「おいおい」という気がしないでもない。

以下、各話の感想メモ。

第01話 凶星奔る

キャラクターも好きだし、時代背景も好き。山岡鉄斎がぞんざいな扱われ方をしていたところを除けば期待感は膨らむ一方。これは見るしかないな。

第02話 地割剣嗤う

幕末の混沌とした雰囲気が出てよい。殺陣のシーンでもそこそこ緊迫感ある。地割剣の使い手をよってたかって殺しにかかる感じが非情な感じとかも含めて。仇討ちアニメとして正しいかどうかはわからんが…。主人公の秋月耀次郎と赫之丈一座の面々のキャラが固まりつつある。秋月は坂本龍馬の用心棒を務めながら、坂本を死なせてしまった男らしい。

第03話 石鶴桜都々逸

勝海舟が理由ありな感じで登場。当たり前か。殺陣シーンのアクションはよかったが、若干停滞気味な回だった。

第04話 裏疑獄異聞

演劇中に暗殺者が座長の命を狙う。昔、何かの映画で見た気が…w 暗殺者が凄腕のはずなのに、やたらドン臭かったなぁ。1、2話で期待が膨らみすぎたためか、3、4話は少しだけトーンダウン。普通に「必殺仕事人」をやればいいんではとか、いい加減なことを思ったり思わなかったり。

第05話 守護鬼放たる

遊郭での戦いは圧巻。魔法陣や信長が出てきたりでトンデモな展開に期待感あり。少しついていけなくなってきたが。あと尊皇攘夷的なエピソードが少なく、幕末の印象が薄いのが気がかり。

第06話 楽日燃ゆ

複数の場所でドラマが同時進行する。だんだん幕末めいてきた。天狗党(山岡に続いて扱いが低いw)の残党なども出てきて、何かが動こうとしているという時代の雰囲気はある。秋月の印象はまだ薄い。そして覇者の首の印象も同時に薄い。やっぱり普通に必殺仕事人で…。

第07話 蒼鉄動く

勝と西郷の会談の席に中居屋が登場。なかなか面白くなってきた。登場人物が多かったので、これまで相関関係が上手くつかめなかったが、だいたいわかってきた。剣客や用心棒の戦いに関しては、2話のときに針尾を全員でよってたかって殺したシビアな感じとかがあまり出ていない。

第08話 仇討本懐なる

中居屋死す。覇者の首が活躍。一座の脚本家・蒼鉄が覇者の首を奪う。キャラクターの関係はある程度明確になり、物語の動きも良くなった感じ。この回で勝と西郷が一気に陳腐な存在になってしまった。秋月と神無左の対決が気合入っていてよかったのだが、二挺拳銃の使い手である神無左が至近距離から弾を外しまくるというのが気になった。

第09話 黒猫哭く

沖田総司登場。鳥羽伏見の戦い以降の幕府軍敗戦の時代。新政府軍が政府軍に置き換わっていく時代を描いている。そういう作品をあまり見たことがないので、かなり楽しい。今回は赫之丈一座は活躍なし。秋月のキャラはいまだ弱い。

第10話 上野陥つ

上野戦争が出てきた。このあたりの時代考証とかが好きなので、そっちに興味が行ってしまう。中居屋が生きていたので、赫之丈一座がもう一芝居(仇討ち)することになった。秋月は相変わらずキャラが弱い。官軍とか幕府軍とかの関係性を知らない人が見ると、判然としないのではないかと思うけど余計なお世話か。

第11話 一座ふたたび仮櫓

うーん。歳なのか。幕末の大きな物語に翻弄される人々のドラマを軸にしつつ、その大きな物語にファンタジーの要素を加えて補強する。よくあるパターンのアニメであり、『 妖刀伝 』しかり、僕が好きなジャンルでもある。うーん、歳なのかこの作品はそのあたりの絡め方がちょっと難しいなぁ。回が進むごとに赫之丈一座の小さな物語になっている気がする。

第12話 竜馬之言伝

うーん、うーん。ちょっと中だるみしてきた。戊辰戦争の幕府軍の悲哀と赫之丈一座の中で起こっている覇者の首を巡る対立がなかなかつながらん。芝居と物語のクロスオーバーもあまりしっくりこない。この調子だと恋話もなさそうだな。

第13話 覇者の首入魂

中盤のクライマックス? 恵比須が死亡。中居屋も二度目の死亡。そこに至る展開が大胆すぎて笑った。戊辰戦争とかどうでもよくなるくらいにわやくちゃ展開。こういうの嫌いじゃない。しかも覇者の首をかぶったのは、榎本武楊だった。なるほど戊辰戦争をそういう位置づけにするのか。覇者の首をかかぶる人間は非業の死を遂げると勝手にイメージしていたのでちょっと意外ではあるが。

第14話 北へ

榎本の言葉が何だか恣意的。神無左と遊山赫之丈が兄弟っぽいイメージシーンが入る。とか思ってたら、場違いな5人が登場。一気にストーリーが実際の歴史を逸れ、エンターテイメントの盛り上がりに進みだした感じ。英仏の覇権争いも始まる。モテモテの秋月の恋愛エピソードも始まる?

第15話 秘刀共鳴す

前半は中だるみしつつ、二人の恋愛エピソードが進む。後半は覇者の首を巡るオカルトな展開。戊辰戦争そっちのけではあるが。深くは突っ込まないが、原画が一番タイトな時期なのだろうか?

第16話 同行四人

そのままのタイトル。白虎隊の一人が姉の住む米沢へ向かう途中、土方歳三、秋月&赫之丈と出会う。米沢はすでに新政府軍の占領下にあるため、土方と秋月が三文芝居をうつ。坂本竜馬の用心棒が沖田、土方、白虎隊と会うのか。凄い展開やね。覇者の首は出てこず。

第17話 議無用なり

土方歳三と茨木蒼鉄が出会う。榎本と茨木は徳川が滅びた後の世界を見据えていることが明らかになった。茨木は土方に共闘を呼びかける。同じ場所にいる秋月&赫之丈は相変わらずピンチも薄く、キャラが薄い。このところの話数はストーリーの繋ぎにあてられているためか、中だるみ気味。

第18話 宿命哀れなり

ここ数話の中では最も大きく展開した回だった。前半の秋月と赫之丈が剣を合わせた瞬間の間って凄く重要なんだろうけど、そこを台詞なしで表現するのはやはりアニメでは難しいのだろうか。後半は全員集合のアクション。秋月が斬られて海に落ちるなどの危機的展開もよかった。赫之丈はそのまま船に残るつもりだろうか…立ち位置が相変わらず判然としない。

第19話 赫逆の五芒星

土方らが五稜郭へ到着。赫之丈一座も再集結して、クライマックスへ向けての準備が整いつつある。今回はじめて劇中歌が流れた。秋月は刀を持ったまま浜に打ち上げられていたが、ああいう状態で打ち上げられて死なないのはテレビアニメの世界だけだよなぁ。しかもうつ伏せだし息はどうやってしてたのかと。ともかく、クライマックスへ向けて三文芝居がまた上演されることになった模様。

第20話 波浪ありて

松前藩に一撃を食らわし、蝦夷共和国が樹立した。覇者の首をかぶった榎本と土方の運命やいかに? という大きな物語と秋月の小さな物語。秋月のほうは、坂本竜馬とのエピソードを繰り返し使っているところを見ると、ようするに「己の宿命の真なるを知るための旅」=「自分探し」という演出なのか。アニメ作品としての興味はかなり失いつつあるが、蝦夷共和国に対しては俄然興味がわいてきた今日この頃。ただ本はあまり出てないみたい。

第21話 海峡渡る

黒田了介が登場。展開が完全に「新説・戊辰戦争」という感じになってきた。戊辰戦争のアニメ化ということ事態は歓迎である。ただし、僕がこのアニメを見始めた最初のきっかけである仇討ち芝居や秋月の剣豪列伝みたいなものは完全に傍流になってしまっている。小さな物語が大きな物語に飲み込まれていくということなのかもしれないが、全体として印象薄の感は否めない。

第22話 北の邂逅

物語の大枠に実在の歴史を用いているわけであるから、作品の作り方が帰納法的であるのは仕方ない。そこにキャラクターを登場させ、演繹的な物語を演出する。僕が感じる違和感は、結局のところ演繹的なところが足りないからなのだと思う。宮崎駿さんの作品に感動するのは、その演繹的な演出が冴えわたっているからなんだろうとこの作品を見てつくづく思う。芝居と時代のうねりを同時並行的にすすめていくロマン主義的な展開が嫌いじゃないだけに、もう少しミクロな話を大事にしてほしい。

第23話 箱館はあかく

英国軍特殊部隊が榎本と直接対決。ここでようやく榎本のアクションシーンが拝めた。めっちゃ強い。物語の方向性は相変わらずよくわからん。

第24話 色は匂へど

土方死す。秋月と神無左の対決。五稜郭がとんでもないことになっているが、僕の気持ちはすっかり焦燥気味。物語の展開だと榎本は死ぬような雰囲気だが、実際には新政府の仲間入りするんだよなぁ。蝦夷共和国そのものには俄然興味がわいている。

第25話 五稜郭浮上す

一気にSFになった。今まで引っ張った時代考証は何だったんだというくらいの展開。盛り上がるはずが、僕自身は盛り下がっているから不思議。秋月と赫之丈が宿命のライバルだったことが判明。

第26話 海の向こうへ

ラピュタか! 茨木蒼鉄が覇者の首をかぶり、そのあとすぐに秋月との対決で死ぬ。覇者の首も封印されてサクッと終了。長い間、覇者の首をかぶっていた榎本のその後に触れてよ。あれだと死んだように思うじゃん。

あと最後に「(覇者の)首を使ってつくられる国家など…」という台詞があるが、国家とは暴力そのものであることを考えれば、覇者の首を使ってつくられる国家も明治政府も大きな違いはない、という結論にしてほしかったところ。

Posted by Syun Osawa at 23:47