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2007年05月04日

CAF2007 フォリマージュ ラ・レジダンス特集

2007年4月28日−6月1日/下北沢トリウッド

CAF2007毎年トリウッドで開催されている海外アニメーションの上映会。アヌシー作品や海外の学生作品が新旧入り混じって上映されるため、変な権威主義に惑わされることなく気軽に作品を楽しむことができる。ありがたいイベントだ。6つのプログラムをすべて見たかったが、時間の都合もあって一番見たかったCプログラムだけを鑑賞した。

Cプログラムは学生作品ではなく、フォリマージュ系列の海外の受賞作品が中心。どの作品も具象と抽象の度合いがちょうどいい具合で、画面の楽しさ、ドラマの楽しさ、テーマの楽しさを全部味わうことができた。特に海外の作品は深いテーマの作品が多く、感情の吐露に終わっていないのも僕の趣味にあっている。

ハッピーエンドの不幸なお話

監督:レジーナ・ペソア(ポルトガル)

日本人にもめちゃめちゃ響きそうな作品。僕も集合住宅に暮らしているので、共感できる部分が多かった。日本の学生作品の中にもアパートを題材にしたアニメがあったが、この作品はアパートに暮らす人々の差異について、一歩踏み込んだテーマ設定をしている。

地球の果ての果て

監督:コンスタンティン・ブロンジェット(ロシア)

こういう構造ありきの短編アニメが特に好き。時間や空間が制限されることで、人間臭さがくっきり浮き出てくる感じがするから。この手のアニメでは球体や密室が舞台になることが多いが、今回は三角の頂点にバランスよく家があるという設定になっている。構造しかないドタバタ劇かと思いきや、しっかりと次の展開につながるオチがついていて感動した。

ラビオリ缶詰の魔人

監督:クロード・バラス(フランス)

クレイアニメ? 子供向けのアラジンと魔法のランプ…ではなく、ハクション大魔王的な内容の作品。

渡り鳥の珍道中

監督:ユーリ・チェレンコフ(クリミア)

これも構造メインのアニメ。抽象度という点では、今回見た作品の中でこの作品が一番高かった。画面の上下を転換させてしまう遊びをたくさん取り入れており、平面的な遊びの感じからかなり古い作品なのだろうと思っていたら、1995年の作品だった。

マロット

監督:ブノワ・ラジィ(フランス)

ものすごーくフランスっぽい作品。アニメで…という意味ではなく、僕の好きなシャルロット・ゲンズブールが若い頃に出演していたフランスの田舎町(特に南仏)を描いた映画の雰囲気に近い。暗さと暴力と性と思春期の感情が、ゆるやかな時間の中で静かに漂っている感じ。なぜこの物語をアニメでやったのかはわからないが、作品を見た後に残る感情はこの作品が一番強かった。

エゴイスト

監督:ジャン=ルプ・フェリシオリ、アラン・ガニョル(フランス)

画面のアヴァンギャルド性はこの作品が一番。手描きのよさをフルに生かそうという試みなのかもしれないが、ちょっと狙いすぎの感もある。内容的には暗くて重いが、嘘のハッピーエンドが追加されていないぶん真実味がある。ただし、ここにもう一つ何かを追加していくのがアニメの役割ではないのかと、宮崎駿信者の僕は思ったりもした。

Posted by Syun Osawa at 23:08