bemod

2007年10月18日

逃れの街

北方謙三/1985年/集英社/文庫

逃れの街売れない純文学を書いていた著者が、エンターテイメント志向の小説家に転向して書いた長編第二作ということらしい。小説を読む習慣がないこともあって、北方謙三の小説を読むのは初めてだった。

これ…完全にライトノベルっていうか、キャラクター小説じゃん。モロに。ご都合主義的にいろいろな事件が起こっていく。個々の事件が綿密につながりあう事はなく、それらの事件を土台にしながらキャラクターの魅力を描いていくという感じか。想像していた内容と違ったので、「何じゃコレ?」と思いつつも、途中からグイグイ引き込まれて、何だかんだでサクサクッ読み終えてしまった。

解説で北上次郎さんがストーリー主義に陥っていないと書いていたのが興味深かった。この作品が書かれたのが1980年代前半。その頃はまだ小説界はストーリー主義うんぬんが支配する世界だったのだな。それは今とは完全に逆。今はキャラクター主義に陥っている。そのため、キャラクター主義の萌芽が見られるこの作品は下手すると陳腐な作品と捉えられる可能性さえある。たとえ陳腐であっても、キャラクターが立っていて演繹的に動き回っていて、最終的に面白ければよいというのがこの手の小説の良さでもあると思うので、そういう意味ではそれなりに楽しめたかな。

Posted by Syun Osawa at 00:21