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2007年11月05日

イヴァン雷帝 ― ロシアという謎

川又一英/1999年/新潮社/四六

イヴァン雷帝僕がロシアという国にひかれる理由の一つに残虐さがある。サメのような目で顔色一つ変えることなく人を殺してしまうような恐ろしさ。僕が格闘家のヒョードルやプロボクサーのユーリ・アルバチャコフが好きなのも、おそらくこのあたりの感覚が関係していると思う。

イヴァン雷帝は殺して殺して殺しまくった。敵も味方も関係なく、神以外のすべての者を殺戮の対象にしていたといっても過言ではないだろう。では誰が彼の殺戮を許したのか? もちろん民衆である。イヴァン雷帝はツァーリとして、恐怖を伴いながら横柄な貴族たちをバッタバッタと切り捨てていった。民衆はそこにカタルシスを感じるのである。貴族もイヴァン雷帝も善ではなかった。民衆はそれを知りながら、イヴァン雷帝をツァーリとして受け入れているのである。

この状況はスターリンの時代にも現れる。そして今、プーチン政権下のロシアも無関係ではないだろう。少々の恐怖政治、対外的に好戦的な態度はロシア国民にとってはイヴァン雷帝時代から脈々と築かれてきた指導者の姿なのかもしれない。

この本ではイヴァン雷帝は人間臭く描かれていた。当然かもしれない。

Posted by Syun Osawa at 00:08