bemod

2008年03月28日

競争しても学力行き止まり

福田誠治/2007年/朝日新聞社/四六変型

競争しても学力行き止まり日本の子ども達の学力低下が深刻になり、反ゆとり教育の流れの中で学習指導要領は改訂される。そのきっかけをつくったのが、世界的に実施されたOECDによる学力調査であった。

僕はこの流れに少し疑問を抱いていた。というのも、OECDが実施したPISAという国際学力調査は、新学力観を調べるための調査であり、教科の知識習得の力を調べているわけではないからだ。ところが、今の日本の流れというのは、どちらかというと「基礎に戻れ運動」のような雰囲気を出しており、イギリスの失敗を踏襲する危うさを秘めている。

次の学習指導要領の改定によって、各学年ごとの教科内容は増すことになる。しかし、PISAが要求しているような社会に出て使える能力がこれによって向上するかは未知数である。このズレは、今のゆとり教育批判と同様に次の批判の種となるかもしれない。

この本はそうした状況を丁寧に解説している。イギリスとフィンランドという、日本から見ると似たような印象の国が、これほど異なる政策をとっていることも意外だった。

書店に行くと、教育関係のブースはちょっとしたフィンランドブームだ。フィンランドメソッドなどというフィンランドの教育方針の真逆をいくような商品もたくさん並んでいる。

そもそも新学力観は次の学習指導要領改定に即応しているとは思えず、ブランド化された実効性のない学歴とそれを求める受験戦争をより複雑な形で助長するような気さえしてしまうのは僕だけだろうか。日本の教育界が推し進めるTIMSS型の学力観とフィンランドブームの先にあるPISA型の学力観の対決については、しばらく気にかけておこうと思う。

Posted by Syun Osawa at 00:43