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2008年06月11日

理科離れの真相

安斎育郎、板倉聖宣ほか/1996年/朝日新聞社/新書

理科離れの真相1990年代の半ばに起きたオウム事件が、日本の理系大学に与えた影響は小さくない。というのも、地下鉄サリン事件を引き起こした彼らの中には、難関大学の理系学部を卒業した人たちが多く含まれていたからだ。

この本は、なぜ科学的な考え方ができるはずの理系大学卒の人たちがオウム真理教にハマったかを、数名の識者が様々な角度から考察している。

そしてまた、国が理科を軽視し、授業時間を減らしていることが科学的リテラシーの低さにつながっている可能性があると主張しており、理科教育の重要性を訴えている。理科離れは技術立国日本の根幹を揺るがす自体であり、今もなお解決していない課題として引き継がれている。

理科離れが止まらない直接の原因は、かつてのSFが描いた「高度な技術に支えられた社会」という夢が、現在多くの部分で実現してしまっていることだろうと荒っぽく想像している。だから、理科離れを食い止めるためには、もう一度ワクワクするような夢の設定が不可欠だと思うのだが、それがなかなか難しいのが現状だろう。

書かれた時期が10年以上も前ということもあり、いわゆる「ゆとり教育」自体には直接言及されていなかった。

Posted by Syun Osawa at 23:22