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2008年08月07日

反貧困 ― 「すべり台社会」からの脱出

湯浅誠/2008年/岩波書店/新書

反貧困格差の問題より貧困の問題を論じろというのはとても納得できる。

とはいえ、生活保護を貰っている人たちに対する不公平感、これは僕の中にまだ少なからずある。そして、そのことを「下向きの平準化」「底辺に向かう競争」と指摘されてハッとなった。貧困化スパイラルには、現在貧困状態に陥ってない人の下向きの感情をも取り込んで、下へ下へと引きずり込むだけの力を持っているのだ。

たとえ生活保護制度を利用しているフリーライダー(ただ乗り)に対する不満があったとしても、生活保護制度そのものが完全に消滅してしまえばいいと思っている人は少ないだろう。そんな社会は到底まともな社会とは思えないからだ。僕の中でも気持ちはまだ揺れているが、とりあえず貧困層を救い上げるための仕組みについて考える契機にはなったかもしれない。

また、この本では「溜め」について書かれている。これはすべての面において重要なことだと思う。貯金も溜めだし、保証人になってくれる家族や親戚も溜めなのだ。もちろん困ったときに力になってくれる友人や知人も溜め。不動産だって溜めなのだ。これらの溜めを持つことは自己責任とされるが、持っていない人も少なくない。だからこそ、一歩足を踏み外したときに、一気に貧困状態にまで陥ってしまうわけだ。

溜めに対する意識の無い貧困層がいたとして、その人たちに自己責任を言うことは確かにたやすい。それは今までの僕の態度でもある。ただ、それだけでいいのだろうかと、最近よく考えるようになってきた。その理由は簡単で、僕だって自分の力だけで生きてきたわけではないからだ。

Posted by Syun Osawa at 01:16