bemod

2008年11月08日

リアルのゆくえ

大塚英志、東浩紀/2008年/講談社/新書

リアルのゆくえ大塚英志さんがこの本の中で共産党に投票していることを認めていた。ずいぶん前は橋本派に近いとか、中道だったのが社会が右傾化したから左に見えるだけとか言ってたけど、共産党へのコミットを公言することは彼なりの戦略なのだろうか? それとも単純に手塚治虫の辿った道を追っているだけなのだろうか?

少なくとも「共産党」という言葉を、共産党の内実をあまり知らない人へ上手に使っているようには見える。『赤旗』と言うだけで「うわっ、左翼の人だ…」とか思ってしまう人に、その戦略はそれなりに有効なのかもしれないが…。どうでしょ?

本書の前半部分は『新現実』に掲載された当時に読んでいる。その頃は東浩紀さんに対して、ちょっと変な人だなといった程度の認識しかなかったので、大塚さんの突っ込みに少しだけ共感を持っていた。それは当時、僕が大塚さんの『サブカルチャー文学論』を読んでいたことや、ネット上で東さんの『動物化するポストモダン』に対してオタク側が総突込みをしているような状況とも関係していたと思う。

ただ今はちょっと状況が違う。大塚さんの回りくどい戦略が完全に空転しているように感じるのだ。思想的にラディカルな自分(共産党が?という突っ込みはさておき…)、マーケティング理論で商品をつくってきた自分、民俗学者としての自分といったものを、どれだけ東さんにぶつけてみてもその空転は止まらない。結局ここが、ニコニコ動画で東さんが述べた「大塚さんは考えが甘い」というところなのかもしれない。勝手に東さんの言葉を補足するなら「大塚さん、もうそういう戦略はいいですよ…」ということなのだろう。

本書の中で東さんが書いていた通り、この本は大塚派は大塚の主張に同意し、東派は東の主張に同意するような内容になっている。僕はどちらの意見もそれほど上手く飲み込めているわけではないのだけど、面白さという点だけで言うのなら今の東さんの言動を支持している。

こう書いてしまうと、小泉純一郎を「面白い」という理由で支持した人間と同じになってしまうわけだが、その当時、昔グラビアでお世話になったという理由で蓮舫に投票した僕も、その程度の面白さに単純に動員されてしまう人間なのだ。そのことを自覚した上で、それでも東さんへの興味は失われていない。

その一方で、大塚英志への関心は少しずつ薄れてきている。『サブカルチャー反戦論』買ったんで、あれは読むだろうけど、不破哲三化していく大塚さんにこれからも興味を持ち続けることは難しいかもしれない。

Posted by Syun Osawa at 08:33