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2009年01月07日

貧乏するにも程がある

長山靖生/2008年/光文社/新書

貧乏するにも程がある貧乏には二種類あって、自己実現を果たすために好きで貧乏を引き受けているタイプと、そんなことは関係なくただただお金を稼ぐのがヘタで貧乏になっているタイプがある。

この本に登場する貧乏作家たちはどちらかと言えば前者に属するだろう。もちろん貧乏を積極的に引き受けているわけではない。しかし、物書きという職業自体が成功してもさほど儲からないということを知りながらその世界に没入しているのであるから、ある程度は貧乏なまま生きていくことを引き受けていると考えていい。

彼らは創作のモチベーションを「貧乏/金持ち」とは別のところに見出している。つまり彼らは儲からないことを知りながら、好きなことを好きなようにやっているわけだ。こうした振る舞いは現在の社会状況とも非常に親和性が高く、多くの場合「自分探し=負け組」と単純に規定されてしまう。これは「貧乏/金持ち」の構図から見たら疑いようがない。

でも、それだけの価値観では人ってなかなか幸せになれないよね、というのがこの本の著者の態度である。この点は僕も大いに賛同したい。

近代の作家や芸術家で裕福に見えた人の多くは、実は元々お金持ちだったりするので、創作の対価で裕福な暮らしをしている者は今も昔もごく一握りだと言えるだろう。このことを根拠に貧乏を肯定するわけではないが、著者が

ただ貧乏に慣れ親しみ、貧乏なままで、破綻はしない程度に、気楽に暮らすことを目標としている。

と書くように、「貧乏/金持ち」=「幸福/不幸」という価値観からは少し離れてた場所で、死なない程度に貧乏と上手く付き合っていながら生きていければと思う。とはいえ、著者のプロフィールを見たら歯医者だったりするので、何となく「ズコー」って感じですが…w

Posted by Syun Osawa at 01:07