bemod

2009年02月18日

科学の倫理学

内井惣七/2002年/丸善/四六

科学の倫理学タイトルがあまりにもドストライクだったため、思わず読んでしまった。個人的な興味は「科学にとって倫理とは何か?」ってところだったんだけど、そういう前提の話はあまりなく、どちらかというと科学者の倫理学だったり、科学行政に携わる人たちの倫理学として論が展開されていたように思う。

内容はというと、ニュートンとライプニッツの有名な微分積分法の先取権争い、遺跡発掘捏造事件、原水爆開発と科学者の社会的責任、生殖管理をほのめかす優生学の問題点などについて、科学者のとった行動や発言について検討が加えられている。

ぶっちゃけスキャンダルネタじゃね? なんて思ってしまうのは、僕が人文系に疎い浅はかな人間だからだろう。とはいえ、前提とされている倫理というのが、科学に対象を絞る必要がないくらい当たり前のことが多く、何だかフワフワした読後感だったのは事実だ。そこで、僕もちょっとだけ科学にまつわる倫理について考えてみた。

科学は自然の仕組みを明らかにしようとしているわけで、そこで知りえる情報は自然そのものであるわけだ。自然は倫理的な振る舞いなどしてくれないので、地震や洪水などで被害が出れば天災として処理される。では、品種改良でつくられた食物を食べて、それが原因で人が死ねばそれは天災だろうか? 明らかに竜巻が起こると知りながら、その情報を意図的に流さなかったことで人が死んだらそれは天災だろうか?

ちょっと例が微妙なんでアレだけど、ともかく科学的な知識というのは科学者を介在しているわけで、科学的なメカニズムから逆算的に被害を算出したとき、そこでは人災のようにも見えるし天災のようにも見えるような事態は起こらないだろうか? そういうところを考えたときに立ち上がる「科学の倫理」みたいなものが、僕の一番知りたいところかもしれない。

何を書いているかわからなくなってきたけど、ともかく「科学にとっての倫理って何やねん?」という問いへの関心は増すばかりだ。そんなわけで、もう少し似たような本を読みすすめてみようと思う。

Posted by Syun Osawa at 00:51