bemod

2009年03月25日

チェ 28歳の革命/35歳別れの手紙

監督:スティーヴン・ソダーバーグ/2008年/西仏米合作

チェ 28歳の革命監督のソダーバーグと主演のベニチオ・デル・トロのコンビといえば、僕の大好きな映画『トラフィック』のコンビなわけで、その二人がゲバラの映画をやるんだから見ないわけにはいかない。そういう状況がハードルを上げすぎたためか、映画が始まってしばらくは肩透かしを食らったような印象をもってしまった。

ところが、ソダーバーグはそこから上手いんだな。

『28歳の革命』では、実に味わい深い演出でゲバラを取り巻く社会的状況を描いている。一番わかりやすいところでは、色の設定。ゲバラが革命闘争を行っている時代をフルカラーにして、革命後の時代をモノクロで表現している。つまり、時間軸を逆にしているわけだ。この手法は『トラフィック』でもやっていた(たしか場所で色分けしていた記憶が)。

モノクロで描かれる世界(未来)では、ゲバラの革命は必ずしも好意的に受け入れられていない。その一方で、革命を夢見る過去の世界では、ゲバラは苦悩しながらも前に進む姿が描かれる。理想と現実の対比と、そこから浮かび上がる残酷さや理想のために取捨されていく現実などが作品に深みを与えている。

『38歳別れの手紙』では色の設定などは行っていない。日記風にゲリラの日常を淡々と描いていた。カリスマとなったゲバラをもってしても、ゲリラ活動が大衆の支持を得られなければ、彼らはただのカルト集団になってしまう。食料も得られず、農民の協力を得られず、ズルズルと隊員の数を減らしていくゲリラ隊の状況が重苦しかった。

日にちを提示して、時間をストレートに順送りする描き方はゲバラの書いた『ゲバラ日記』を模しているのだろうか? 『ゲバラ日記』と三好徹『ゲバラ伝』が読まずに積読になっているのが悔やまれる。

僕はゲバラが好きだ。なぜなら僕はおそらく平和主義者ではないからだ。そして、彼は完全に中二病患者であり、アナーキストでもある。僕はそんなゲバラが好きなのだ。そして、ソダーバーグはそんなゲバラを描いていたように思う。

Posted by Syun Osawa at 01:00