bemod

2009年04月08日

フリクリ(全6話)

監督:鶴巻和哉/2000年/日本/アニメ

フリクリ(全6話)僕は悪ふざけが好きだ。

このアニメも全力で悪ふざけしている。ただ、エヴァ以降のセカイ系的想像力というか、メンヘラ的な心性にキャラクター達の志向が絡め取られていて、少し痛々しい印象も残った。公開年が2000年なのでそれはもうしょうがないのかもしれない。そのあたりはよくわからん。

ともかく、音楽の青臭さといい、メタ的な志向が逆に自分たちの想像力に蓋をしてしまって、どこにも出られない袋小路に迷い込んでしまったような、何とも言い難い作品だった。パロディの部分を僕がちゃんと理解できていたらもっと深く楽しめたのかもしれないが…。

作品の中では漫画のフレームを用いたアニメがわりと頻繁に登場する。これは後に個人制作アニメ作品の中でも見かけるようになったが、手法としてはわりと昔からある手法なんだなぁと改めて思った。

以下、感想メモ。

第01話 フリクリ

ポップでキュートなライトコメディという感じ? いきなりメタ視点ていうか、自己突っ込み形式の作品なんで、ちょっと困惑気味。GAINAXが手がけたエヴァ以降のOVAらしいので、こういう作風にならざるを得なかったのかな? ようわかりません。

いずれにせよ、90年代的なセカイ系視点は残っていて、怠惰な日常。平凡な主人公。やり手なヒロイン。ありふれた世界に一つだけある建造物もしくは集団。みたいな世界設定は継続されている。ポスト萌えアニメ的なスタンスを持っていることは間違えないにしても、9年前に作られたこの作品が当時どのように受容されていたのかはわからない。

いかんな、こういう感想を持つこと自体よろしくない。でも、話としては平凡な日常に超少女が現れて日常をかき乱しますよっていう王道の登場シーンの変奏以外何ものでもないからなぁw

第02話 ファイスタ

物語なき時代におけるメタアニメの臨界点的作品ということなのかなぁ。筋の通ったストーリーが引っ張っていくという展開じゃないので、おっさんには少ししんどい作品。ナオ太にちょっかいを出していたマミ美が高校で虐めを受けていることが明かされるなどキャラクターたちの内面が少しずつ明らかになってきた。

完全にセカイ系の亜種というか、エヴァ以降のオリジナル作品をどうつくるかというところで、中二病的な症状が出てしまっているわけだけど、よく考えるとこういう作品をセカイ系と考えるのがそもそも間違いなのかも。閉塞感を打ち破るパンクス的な想像力、80年代のリヴァイバル的な何か、ユースカルチャーの復権というか、ぶち壊して突き抜けたいという感情を表現したいと思っているから、音楽にpillowsとかを持ってきているわけだろうし。

第03話 マルラバ

ニナモリ(市長の娘、学級委員長)がアンケートを操作して劇の主役になった話。最初の展開は唐突で良くわからなかったけど、後半のアクションシーンを見てようやくこの作品の楽しみ方がわかってきた。独白の連鎖がこの作品が作られた時代特有の現象かもしれないことはもう少し後に調べることとして、アンチ萌えとポップの間にあるものをシンプルに追求している彼らもやはり中二病的な宙吊りの中で作品を作っていることを伺わせる。アクションシーンってやっぱしアニメの核だと思った。

第04話 フリキリ

よくできた回じゃなかろうか。前半に野球とトラウマの話で前フリして、情報を開陳しながらセカイ系的な大風呂敷で幕。父親を殺すくだりなどのミステリーの要素も加わっていて、『エヴァンゲリオン』凝縮版といった感じ。まさにガイナックスの十八番芸といったところだろう。

ところで、この作品を観ているとなぜだかFLIP FLAPを思い出してしまう。もちろんフリフラと呼ばれていたという以外ないのだけど…。あと、途中で無駄に鼻血を出した美少女の描写があったが、あれって大昔にコザキユースケさんがホームページでやってたネタと被るな。

第05話 ブラブレ

明確にポストエヴァ的な志向を持ってる。セカイ系をメタってネタってパロッて乗り越えようとしている雰囲気は伝わる。ただ、その手のサブカル的な文脈のほかに、この回を見ていて気づいたことがある。昨今、キャラ化する若者について語られている状況をよく目にするが、そうした言説の一端はこの作品に出てくるような女性によくあらわれているように感じる。つまり、キャラ化の傾向が強くなっているのは、男(オタクの男も加えていい)よりも女のほうではないかということだ。

第06話 フリクラ

世界設定を開陳するような内容だとは思ってなかったなのに、最終的にはそっちに一気にシフトしていった。毎日変わらない日常とかそういう世界への諦念みたいなもの、そういうところから抜け出すための処方箋として導入されるハルコみたいな女性や、不思議ちゃんを演じる女子高生。何かが変わったわけではないのに、少しだけ大人になるといった、ただそれだけのビルドゥングスロマンさえも達成されにくい世界。

ではこの世界とは何だろうか? 箱庭の中に生きているという、そういう狭い視野の中でクリエイターがもがいているような気もする。メタアニメだとはいえ、そういう作り手の苦しさみたいなものも何だかちょっと感じられる作品だった。

Posted by Syun Osawa at 00:17