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2009年08月21日

考えるヒント

小林秀雄/2004年/文藝春秋/文庫

考えるヒント小林秀雄の本は、以前から読んでみたいと思っていた。でも、僕には若干ハードルが高い気がしたので、彼の本の中でも一番簡単に書かれていそうなものを読むことにした。それがこの本。

新聞に掲載された短評の類はわかりやすく書かれているのでサクサク読める。その一方で、「平家物語」やら「福沢諭吉」など文芸誌に掲載されたものは、僕の脳力ではなかなか難しかった。

難しい言い回しを僕なりに解釈しながら読んでいて感心したことは、彼が考えながら書いているということが、非常によく伝わってきた点だった。これは、まとまらない考えをダラダラ書き連ねているという意味ではない。ましてや、要約でもなければ、アナロジーに頼っただけの衒学趣味でもない。そういうお手軽なところから何歩も踏み込んだ領域で、自分の考えを、しかもクリアに書いている感じがして、さすがは文芸評論家だなと感心したわけだ。

例えば、僕はこのブログでも読書やイベントの感想を書いているが、正直考えて書いているかといえばやや疑問である。自分で書いたエントリを後日読み返すと、ただ本の内容が長々とトレースされているだけだったりすることも少なくない。要するに自分の考えが書かれていないのだ。

この本の中では、本居宣長の「意は似せやすく、姿は似せ難し」という言葉を受けて、著者は自分なりの考えを書いているところが一番よかった。彼の「姿」の捉え方が素晴らしい。ここでそれを書くと単なるトレースになるので省くが、ともかく、彼の「自分の頭で考えて、自分なりの考えを書く」という態度そのものに、僕自身は考えるヒントを貰ったと思う。ただし、「じゃあ、この文章は考えて書いたのか?」というツッコミだけは、華麗にスルーすることにしたい。

Posted by Syun Osawa at 00:03