bemod

2009年08月28日

姑獲鳥の夏(上・下巻)

京極夏彦/2005年/講談社/文庫

姑獲鳥の夏初出は今から15年前の1994年。京極夏彦のデビュー作である。何でもこの小説は、持ち込み原稿だったらしいから、当時これを読んだ編集者はさぞ驚いたことだろう。ミステリーはおろか小説すらほとんど読まない僕でも驚いた。そして、2日間、夢中になって読んだ。

序盤は登場人物の台詞が長々と続いて、なかなか物語が動かない。普段小説を読まない僕は、いつもならここで読むのをあきらめるのだが、不思議と苦にならなかった。とにかく読ませるのだ。一見面倒臭そうな薀蓄も、面白い読み物として読まされてしまう。そして、その面白さによって京極堂のキャラクターがより際立っていく。

荒唐無稽なキャラクターについても、舞城とか西尾とかを読んでいるためか、拒否反応もなく、むしろキャラクター小説としてすんなり読むことができた。逆に妖怪や民話に関する部分はむしろ荒唐無稽さはなく、論理的な方向に還元されていて、そこも僕の性分に合っていた。

物語については、オチも含めて大体のことがある程度読めていたが、語り部となった関口の記憶そのものが曖昧だったりして、話が上手い具合に揺さぶられる。そこから生まれるスペクタクルに何度も感動し、驚かされた。ミステリー小説を舐めてたつもりはなかったけど、こんなにエンターテイメントだとは思わなかったねぇ。いやはや…。とりあえず、京極堂シリーズは地道に読んでいこう。

Posted by Syun Osawa at 00:35