bemod

2009年09月11日

ジーキル博士とハイド氏

スティーヴンソン/訳:大谷利彦/1963年/角川書店/文庫

ジーキル博士とハイド氏薄い本なのに結構読み難かった。僕がこの手の古い訳本を読む習慣がないことが一番の原因なのだが、前半の謎の引っ張り方(もったいぶり方)が面倒くさくて、イライラが募ったことも原因だと思う。しかも、ネタバレ後の話も結構ダルい感じだし。

こういう古典は中高生の頃にちゃんと読んでおかないといけないなぁ。僕はそういう訓練を全く経ていないから、文体にイライラするとかアホ丸出しな感情が芽生えてしまうのだ。恥ずかしながら、今回この本を読むまで、この超有名な作品の粗筋すら知らなかった。

ジーキル博士は科学者的な振る舞いをしているが、話の内容自体は科学的な考証を踏まえたSFな内容ではない。『フランケンシュタイン』のように、博士が人造人間を作っているわけではなく、自分自身がハイドに変身するという、いわゆる変身モノである。

変身モノなら、どんどん通行人なんかを殺しまくったりすれば、それはそれで盛り上がりそうなものだが、変身するという行為そのものをミステリーにして引っ張ったせいか、登場人物の動きがずいぶん抑制されていた気がした。事件もそれほど起きなかったので、これといった盛り上がりもなし。

ハイド氏に潜む悪がジーキル博士の内側に潜んでいるものであると開陳されるところは一つの山場を形成していたのだろう。まぁ、古典だしこんなもんなのかな? 博士の内側に潜む闇が単なる二重人格ということだけで処理されてしまっており、そこに深さを感じるまでには至らなかったのは少し残念。ただし、ストーリーのプロット自体は僕好みだった。

Posted by Syun Osawa at 00:32