bemod

2009年11月14日

バカヤロー経済学

竹内薫/2009年/晋遊舎/新書

バカヤロー経済学本当ならば高橋洋一氏との共著となるはずだった本。高橋氏が逮捕された経緯については、いろいろな憶測が飛び交っており、中には国策逮捕なんじゃないかといった声もある。真相は闇の中だが、この本を読むとそんな憶測がトンデモとは言い切れないくらいのリアリティを帯びてくるから恐ろしい。

ようするに、官僚にとって本当に都合の悪い人は、消されるという古典的な図式である。たしかに高橋氏は、この本の中でも、官僚にとって都合の悪いことをたくさん言っている。世間を騒がせたニュースの裏側には、官僚達のパワーゲームがあったことなどをわかりやすく解説されており、僕のような素人はすっかり納得させられてしまった。さらにまた、経済学の基本的なこと(例えば、財政政策や金融政策の話)も対話形式で丁寧に解説されていて、経済学の導入本としても面白く、なかなかお得感のある新書だったと思う。

唯一残念なのは、この本の出版時期が民主党が政権をとる前だったことだ。本では、たとえ民主党が政権をとっても、ばら撒きをやるだけなので、一時的には良く見えても結果的には大きな変化は望めず(なぜなら官僚機構は温存されるから)、さらなる政界再編が起こるかもしれないと高橋氏は予想している。金融・郵政大臣に亀井氏になって、郵政民営化見直しの流れが加速している状況をみると、この予想はかなり当たっているようにも思える。ただ、それなりに成果を出し始めている部門もあるようなので、欲を言えば現在の状況での解説も読みたかった。

民主党はもともと大きな政府を志向している人が多いらしいし、実際の話、政権をとってからも円高は続いている。これでは輸出は伸びない。しかも、世界的な不況が進む中で、日本は高齢化が進み、かなりの割合で重要な設備投資も終わっている。そんな飽和状態で、今後も景気がバブル前と同じような上昇カーブを描いていくことは、素人目に見ても難しそうだ。

そんなわけで、こういう本を読んでいると、もはや人生オワタ\(^o^)/的な状況にも思えてくるが、個人的な範疇でみると、唯一その終わった感を救っていると思われるのが、この10年で爆発的に普及したインターネットである。

インターネットの登場は、コミュニケーションコストを大きく下げ、それに伴う娯楽の質を大きく変化させた。そしてこの変化は、デフレ基調の暗澹たる日常を生きる貧乏な人々が、絶望せずに、それなりに生きていくのに十分な娯楽を、対価以上に得ることができる機会をもたらしている。機会の平等による実力社会の加速化によって、今まで以上に富が実力者へと流れていく中、しかし、この点においてだけ、富の逆流現象が起きているのだ。そう考えると、ネットから阻害されている人間はそれらの恩恵も受けていないわけで、さらにキツい状況を生きているともいえるのか。携帯を持っていればまだマシだが、それすらないとなると…うーむ。

Posted by Syun Osawa at 01:43