bemod

2009年11月25日

おもしろ実験と科学史で知る物理のキホン

渡辺儀輝/2009年/ソフトバンククリエイティブ/新書

おもしろ実験と科学史で知る物理のキホンソフトバンククリエイティブが、いつの頃からか サイエンス・アイ新書 という、科学系読み物の新書をシリーズ化して刊行している。この本もそのシリーズの1冊。

子どもの「理科離れ」なんていう言葉が死語になるくらい、その状況が恒常化している今、あえてこの市場を狙うのにはそれなりの理由があるのだろう。素人なりに考えれば、恒常化しているがゆえにこのジャンルの市場は変動が少ないとも言えるので、出口の見えない出版不況の中、少しでも安定収益の見込める地場を確保したいという狙いがあったのかもしれない。

とはいえ、そもそもこのジャンル自体が、長らく講談社のブルーバックス・シリーズの独壇場になっていて、その強固な牙城は揺るぎそうにない。サイエンス・アイは、そんな誰もが攻めにくいと思って敬遠していた場所に、あえて風穴を開けてようとしているわけだから、なかなかチャレンジャーだなと思う。

で、内容の話。

高校の物理の内容に沿いながら、そこに付随する科学史の話と家庭でもできる実験の紹介という構成になっていて、やり直し系の僕みたいなのが読むにはかなりいい本だったと思う。有名なところでは、トーマス・ヤングのロゼッタストーン解読みたいな与太話を含め、フーコーの光速測定の方法、キャベンディッシュの法則発見裏話、エジソンとテスラの戦いなど、科学史上の熱いトピックが散りばめられていてるし、しかも敷居が低い。実験の紹介についても、実際高校になると実験なんかもほとんどやらないので、初めて見るような実験がたくさんあり、実用度という意味でも結構高い気がする。

少し残念だったのは電磁気関係が少なかったところか。マクスウェルと電磁気学のあたりは、体系化までの展開が、高校物理の中でもかなり美しかったと記憶している(そういう記憶の痕跡が残っているだけだがw)ので、ここの扱いが小さかったのは寂しい。とはいえ、新書の枠内ではそれだけのことを望むのは、無理というものだろう。このシリーズは、ブルーバックスよりも生活臭が漂ったゆるい感じの企画本が多いので、やり直し系の人には案外向いているのかもしれない。マンガでわかるシリーズを含め、いくつか読んでいこうと思う。

Posted by Syun Osawa at 00:55