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2010年01月16日

歴史は「べき乗則」で動く

マーク・ブキャナン/訳:水谷淳/2008年/早川書房/文庫

歴史は「べき乗則」で動くこの本を読めば地震の予測がいかに当てにならないかがわかる。自然界にあらわれる「べき乗則」というのは、どのような因果関係を持っていても、マクロな視点に立てば綺麗な普遍性が導き出されてしまうというものだ。そして、それらが複雑系の話と絡めて説明されていた。

僕は、複雑系のいわゆるカオス状態が予測不可能性を高めているのだと思っていたが、どうやらその認識は間違っていたようだ。秩序的な状態とカオス状態があって、その間に臨界状態がある。べき乗則というのは、この臨界状態にあるときに導き出されるものだ。そして、自然の中の均衡状態は常に臨界状態へと突き進む。これを「自己組織的臨界状態」というらしい。森のクライマックス(自然にできあがった極相)というのも、まさにそんな感じなんだろうな。

市場の株価がランダムウォークするのも、多くの人々が利益の最大化を求めながら売ったり勝ったりしているからで、そのために均衡状態が高まっていき、やがては臨界状態を生んでしまう。だから、上がるか下がるかが経済学者にもまったく予測できないのである。

こういう本を読んでしまうと、未来の事なんて全然わからないし、人間が自分たちの思惑でいろいろ動いても、どうせマクロな視点に立つと、パターン化された繰り返しの溝に落ち込んでしまうという諦念を抱きがちだ。でも、僕はこの教科書的な考え方に一つだけ違う考え方を付加することにした。それは、「人生はマクロでは決して推し量れない」という認識だ。人生はミクロでしかない。だから偏りはでる。不公平も生まれてしまう。でも、それが人生の良さでもあるのだろう。

Posted by Syun Osawa at 02:31