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2010年02月09日

灰羽連盟(全13話)

監督:ところともかず/2002年/日本/アニメ

灰羽連盟(全13話)安倍吉俊氏の同人誌から生まれたアニメ。何か伝説化しているらしい。

灰羽の不思議さって、灰羽がどこからやってきたかっていう出自があきらかになるところでストーリーを引っ張って、最終的に世界の全貌を開陳するのかと思っていたら、そこは何だかぼんやりしているところだと思う。罪つきっていうのがどういう罪なのかもやっぱりぼんやりしていて、しかもその罪ってのが、灰羽になる前ではなく、灰羽時代の罪っていうか、そういうものだった。

この辺が奇妙なんだよな。不思議な世界の出自そのものではなく、不思議な世界を前提とした上での功罪の話になっている。セカイ系的な手つきなんだけど、空気系でもあるという不思議なアニメだった。

以下、感想メモ。

第01話 繭 空を落ちる夢 オールドホーム

いきなり落下してくる人。本編と関係ないけど、これ見てピンッと来た。これって、ITS Cartoonsという中国のFLASHアニメチームが作った「角色RPG」という作品のオープニングとかなり近いものだった。なるほどねぇ、あれってこれをモチーフにしたのか。そういや、PleymoのMarc Maggiori氏のパクリ疑惑の一件とかどうなったんだろうねぇ。

てな与太話はさておき、第一話は灰羽という謎の生き物が住む世界の紹介。天使の輪がついているので、死後の世界なのかな?というのは単純に想像されるが、はっきりとしていない。今わかっているのは、女の子がいっぱいいて、萌え要素がいっぱいだ…ということくらい。

第02話 街と壁 トーガ 灰羽連盟

空から落下してきたからラッカというのはなかなかいいネーミングセンス。彼女がコミュニティに受け入れられていく様子を描きつつ、その過程で灰羽の住む世界を紹介していくという回。事件も何もなく、ただ紹介していく感じが今っぽいのかも。19世紀後半のイギリス郊外という感じの街で、灰羽連盟は秘密結社っぽい雰囲気もある。壁に囲まれている街から彼女たちは外へ出ることは出来ない。にしても空気だなぁ。もしかして、全盛期のジャンプ世代のおっさんが見るには辛いアニメなのかな? ヨコハマ買出し紀行的な…。

第03話 寺院 話師 パンケーキ

レキが結構ナイーブなキャラだということがわかる。ラッカはヒカリと一緒に寺院へ。寺院と言いながら人里離れたところにあって、誰も近寄らないという。どんな寺院やねん。ともかく、そういう世界ですよってことが、静かに説明されている感じ。このまったりした空気感そのものが、この作品の見所なのだろうか。

第04話 ゴミの日 時計塔 壁を越える鳥

いろいろな灰羽たちの仕事の様子を見て回るラッカ。みんなはやりたいことを仕事にしているけれど、自分はやりたいことがわからないと悩み始めている様子。壁に囲まれた世界の中で、まず働かなければいけないという前提があって、そこに自分探しのロジックが加わってくる。超現代社会(しかも日本)のナイーブなところが練りこまれていて、そういうところも女子たちに受けた理由なのかな? 今のところよくわからない。

第05話 図書館 廃工場 世界のはじまり

図書館に居場所を見つけたラッカ。レキは不良グループとつるんでいるという情報も。しかしネタとしては、これくらい。この作品の命はやはり、空気感の演出にあるのだから、普通の会話激に終始するというよりは、動画枚数を減らしても背景とか、背景の動きとか、空気のざわめきとかそういうことにもっとスポットを当てるべきだったのではと思う。なんか見ていて惜しい気がする。

第06話 夏の終わり 雨 喪失

あまりに空気過ぎて、何と書いていいかわからないw そういえば昔、『ハチミツとクローバー』というアニメが深夜にやっていて、だいたいその時間はPCの前に座っているから、音だけを聴いていた。絵は見えなかったが、会話劇が中心だったので、話は大体わかった。まさにそんな感じ。後半はクーが西の壁に一人で行ったという事で、少し緊張感が上がってきた。やっぱドキドキ感はないとね。壁に囲まれているっていう事だけが唯一の緊張のポイントだからね。

第07話 傷跡 病 冬の到来

だんだん興味関心が薄れてきた。うーむ。ビジュアルメインなのにビジュアルが弱いせいだろうか…。カラスの伏線が少しだけ生きてきた回。

第08話 鳥

ラッカが猛烈な自分探し病を発症した。「私なんていなくなっちゃえばいいのに…」とか言ってしまって、これは厳しい。なんで厳しいと感じるかというと、彼女は元々所在の無いところから登場しているわけで、何者かもはっきりしていない。一方で、見ている視聴者たる僕たちは人間として生きているわけで、ある程度所在がはっきりしている。その状態でなおかつ自分探ししている人もいるわけだ。この場合、両者は自分探しという言葉だけで単純に共通事項としてしまっていいのだろうか?

第09話 井戸 再生 謎掛け

森の井戸に落ちるラッカ。自分探しが止まらない。うーん。重い。悩むことが悪いんではなくて、悩むなら悩むなりの表現があるはずで、いわゆる普通のセルアニメとストーリー展開の中でただ鬱々としているのでは、空気アニメと評されても仕方ないかと…。最近は空気アニメもOKという雰囲気があるらしいけど。

第10話 クラモリ 廃工場の灰羽達 ラッカの仕事

この世界を覆っている「壁」と灰羽が背負っている「罪」ってのが一つ重要な要素なのか。空気系のアニメとは思っていなかったし、ここまで静かに世界設定を開陳していく話だと見るのがなかなか辛い。どこかの回の感想でも書いたが、たぶんこの作品の勝負どころは背景美術であったかと思う。それと世界観。そこが普通のアニメとして処理されているから、なんかズレた感じがするんだと思う。

第11話 別離 心の闇 かけがえのないもの

暗いなぁ。灰羽って結局、自分探しから抜け出して壁の向こうへ飛び立つってところが、話の核になってるのか。だから、羽を落としてその世界へ留まろうとするレキのアイデンティティの揺らぎが、逆に物語を生んでいてるわけだな。これは完全にセカイ系の論法を踏襲しているじゃないか。うーむ。

第12話 鈴の実 過ぎ越しの祭 融和

暗い。そして重い。なんで、そんななのか全く理解できない。これ監督もあまり理解してなかったから、こんな感じになってしまったんじゃないか。ともかくあと一話だ…。

第13話 レキの世界 祈り 終章

最後までしんどかった。暗い絵ばかり描いていたレキが明るい絵も描いていてほっとした、というくだりがあるが、そんな感じなんだね。自分の殻に閉じこもっていたレキが最後に巣立つのだが、巣立ったからOKということで本当にいいのかな? オールドホームが好きだったレキがいて、しかしその生活にしんどさも感じていた。そういうレキがその世界の中で葛藤しながら上手い居場所を見つけるのではなく、別の居場所にまさに旅立っていってしまったわけだから、これでは要するに超越的な解決ということになってしまう。

Posted by Syun Osawa at 00:58