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2010年02月18日

はなたれ小僧は元気な子〜さよなら滝平二郎〜遺作展

2009年12月19日−2010年2月3日/逓信総合博物館

はなたれ小僧は元気な子〜さよなら滝平二郎〜遺作展予想以上。子どもの頃の滝平二郎体験が一気に蘇ってきた。彼の代表作でもある絵本『モチモチの木』は、ストーリーのほうはすっかり忘れてしまっているのに、絵のほうは今でもはっきりと覚えている。シンプルな線で構成されているにもかかわらず、独特の雰囲気を漂わせており、しかも素朴で強いのだ。いやー,まいった。

滝平氏ははコラムもたくさん残されいて、今回の展覧会ではその文章もいくつか公開されていた。その中で、滝平氏が「自分の絵は物語りすぎる」といった内容の話を書かれていた。たしかに絵が物語っている。絵本で使用された絵が多く展示されていたと言うこともあるが、文字を追わなくても話の意図がわかるし、一枚の絵であっても田舎の子供達の遊ぶ姿が空気感を伴って立ち現れてくる。物語不在と言われる時代に、ポテンシャルの高さに学ぶべきところは多いように思う。

切り絵という技法も僕には新鮮に映った。黒い紙を切り抜いて作っているから当たり前なのだが、黒い部分が大胆に取り入れられている。そういえば、子どもの頃はこの黒い部分が闇のように感じられて少し怖かったことを思い出した。

そのほか、切り絵はカッターで切り抜くために直線的でシンプルな絵になる。そのため、この過程において、情報がかなり縮減されることになり、滝平氏は、この情報の縮減過程において、非常に豊かなイメージを抽出している。

さらにまた、切り絵の特徴でもあるすべての線が繋がっているという制約を非常に上手く利用しているようにも思える。そこから、世界が繋がっているというイメージや村落社会のコミュニティの姿まで透けて見えると言ってしまうと言いすぎかもしれないが、それくらい絵の中に「繋がり」みたいなものが感じられて、そのあたりも含めて今に無いものを感じさせてくれる作品群に圧倒されっぱなしだった。

Posted by Syun Osawa at 01:43