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2010年05月17日

シャーロック・ホームズ傑作選

アーサー・コナン・ドイル/訳:中田耕治/1992年/集英社/文庫

シャーロック・ホームズ傑作選シャーロック・ホームズを読むのなんて、小学生以来かも…。それ以降、ほとんどまともなホームズ体験のなかった僕にとって、宮崎駿氏が制作にかかわっていたTVシリーズの『名探偵ホームズ』だけが唯一のホームズ体験になっている。だから、この本を読んでいても、頭に浮かぶホームズはあのダンディな犬のホームズだった(それだけあのTVシリーズのビジュアルイメージが強かったとも言えるが…)。

とはいえ、僕の脳内がそんな貧しいイメージの世界で覆われていたとしても、ストーリーのほうは単純明快で面白かった。「娯楽小説は時代に依存しているから普遍性を帯びない」なんてことを昔の純文学系の人が書いてた気もするが、あの考え方ってたぶんウソだと思う。150年位前に書かれた作品にもかかわらず、普通に楽しい。

ん?

でもこの楽しさって、やっぱり『名探偵ホームズ』のイメージを引きずっている気がしないでもない。昔のポップさを今のポップさで上書きした感じだったから楽しめたのではないか? この上書き感ってたぶん、ポップカルチャーにおいては重要なことなのか? そう考えると、ホームズ作品の多くが、冗長な心理描写で引っ張られる長編ではなく、シンプルなプロットとキャラクター性で引っ張る短編だったことがポップさを上書きするためのフォーマットを用意したとも言えそうだ。

日本でも小学館が、海野十三の小説を現在の作家の感性でリライトする企画本を出していたし、やはり「かつてのポップは上書きされて、再びポップとして蘇る」という現象には、それなりの信憑性があるかもしれない。いや、ないだろうなw

Posted by Syun Osawa at 01:51