bemod

2010年05月18日

もしも高校野球の女子マネージャーがドラッカーの『マネジメント』を読んだら

岩崎夏海/2009年/ダイヤモンド社/四六

もしも高校野球の女子マネージャーがドラッカーの『マネジメント』を読んだらこの前、書店へ行ったら『週刊ダイヤモンド』の表紙にこの本の表紙のイラストが使われていてビビッた。この本、相当売れているっぽい。

たしかにこの本は、何と言うか…目新しい。それは間違いない。小説を通して、ドラッガーの思想に触れるという構造になっていて、しかもそれをビジネスマンの物語として展開していないところに肝がある。もしもこの本の読者層がビジネスマンだとしたら、主人公がビジネスマンでは話が現実的になりすぎて、瑣末な突込みが多くなされてしまうだろう。ストーリーはあくまで女子マネージャーが野球部を牽引しながら甲子園を目指す野球の話である。にもかかわらず、それを読者が勝手にビジネスの教訓としても受け止めてしまうからこそ、ヒットに繋がったのだろう。

主人公の女子マネージャーは、常にドラッガーの『マネジメント』の助けを借り、そこに書かれている言葉を信じて突き進んでいく。その妄信的な感覚に妙な違和感も感じなくはないが、そこは信じることの強さがあるのだと思えばいいし、そもそも「マンガで読む〜」系のHow to本だと考えれば、その導入としては非常に上手くいっていると思う。

僕自身も導入マンガを描いてみたいなぁとか、いろいろ思っていることもあって、この本にはかなりの刺激を受けた。読者に伝えたいテーマとそのテーマを走らせるストーリーとの距離感、導入本がそれなりの正当性をもつためにはそこが一番重要なのだということを教えられた一冊になった。きっと、これから類似本が死ぬほど出るのかもね。

Posted by Syun Osawa at 00:59