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2010年06月01日

著作権の世紀 ― 変わる「情報の独占制度」

福井健策/2010年/集英社/新書

著作権の世紀 ― 変わる「情報の独占制度」先日、ニコ生で放送されたJASRACの番組を見て、著作権のことが妙に気になりだした。一番の理由は仕事絡みで知っておきたいことがあったからだが、それ以外にも、最近声高に叫ばれる肖像権の話とか、N次創発的なコンテンツの著作権の所在など、何となく気分で受け入れているようなことが多すぎるような気がして、少しだけ認識を深めておきたいと思ったのだ。

この本の中で特に面白かったのは、「擬似著作権」についてだった(この「擬似」というところが、「疑似科学」を連想させていい感じ)。この擬似著作権というのは、僕らが普段「これは著作権なんだろう」と思っているものが、実は特に法的根拠がないというもので、例えば有名人のペットの肖像権とか車の肖像権みたいなものは存在しないらしい。

そのほか、例えば拝観料をとる神社仏閣の写真などについても興味深いことが書かれていた。通常、こうした写真を出版物などで使用する際、神社などに許可を取る。そして、多くの場合高額の使用料が請求される。しかしこの本によると、本来物には肖像権など存在しないし、これらの物の著作権は当然きれているのだから、それらの物を撮影し、出版物に使用する場合、神社などへの許可を取る必要はないと書かれていた。

では、神社側はどうやっているかと言うと、撮影禁止にしておいて、自分達だけが写真を撮っておく。そして、依頼があった場合にその写真を貸し出すという方法をとるのである。つまり、ここで請求される使用料とは、それを撮影した著作者への著作権料を支払っていることになるわけだ(逆に言えば、自分で撮影してしまえばその著作権は自分になる)。

こうした擬似著作権によって、著作権の囲い込みのようなことが行われている。そして、この擬似著作権を盾にする者は、それがあたかも当然の権利であるかのように振る舞い、ただの業界の慣例であるにもかかわらず、法的な根拠があるかのごとく世間に流布している。これでは偽科学と同じではないだろうか?

疑似科学ネタは、もうかなりやりつくされている感があるので、これに騙される人はだいぶ少なくなったように思う。他方、擬似著作権ネタは僕も含めてまだまだわかってないことが多いので(もちろん正当な著作権や肖像権のことも!)、今後どんどん検証本が出て、擬似著作権ブームが起こることを密かに期待する。

Posted by Syun Osawa at 00:04