bemod

2010年07月31日

靖国 YASUKUNI

監督:李纓/2007年/日中合作

靖国 YASUKUNI少し前に肖像権の問題とかで話題になってたドキュメンタリー。右翼が公開させないように脅したのか、劇場がビビッて自粛したのかはわからないが、そのドタバタが話題を呼んで、結果として多くの人に見られることとなったドキュメンタリー映画である。僕はその当時、話題になっていたことは知っていたものの軽くスルーしていた。

で、どんなものかと思って見てみたら、かなりまともな内容でびっくり。何でこの内容で右翼がピキッたのか不明(そーいや、鈴木邦男氏はいい作品だと言ってたっけ…)。僕は率直に、非常にまっとうなドキュメンタリーだなと感じた。

靖国参拝のシーンでは、入れ替わり立ち代り、いろいろな制服をきた団体が参拝にやってくる。ただただ黙祷する団体もあれば、今の政府の批判を混ぜる人もあり、歴史について等々と述べる団体あり。天皇陛下万歳を叫ぶ人もいた。このコスプレ博覧会のような映像は、靖国の捉え方が重層化および複数化している状況を映し出していたと思う。

例えば、小泉首相を支持するアメリカ人がいて、最初に集まってきた人は彼に好意的だったが、途中からガラの悪いおっさんがやってきて「毛唐は帰れ」と単純な罵倒を繰り返していた。他にも、中国人が国歌斉唱を妨害したとき、最初は注意だったのが、途中でリンチに変わってしまった。右翼的な言説を叫び続ける人が持つある種の負のベクトルが、何かの拍子にガッと集中して爆発してしまうのだ。中には「やめろ!」という人もいるのだが、その群衆の中で怒りを発散させてしまう人の恐ろしさが淡々と映し出されていた。

それと対照的だったのが、靖国刀を作る職人で、彼は余計なことは何も言わない。軽々に言葉にしないのだ。宮司の言葉も重かった。単なる政治批判や現状批判のための道具として靖国を使ったりはしない。彼の声は、どこまでも宗教者としての声だった。

てなわけで、非常にいいドキュメンタリーだったし、こういうドキュメンタリーを撮ったのが中国人だというのもちょっと驚きだった。ただ、この作品を海外の人が見たとき、果たして靖国のことがわかるようになるかと言われると、そこはやや疑問である(今、日本で起きている靖国周辺の喧騒は上手くすく追い上げているとは思うが…)。

Posted by Syun Osawa at 13:48